序盤でポイントをかせごう!「飛車先の歩交換3つの得あり」「桂馬の高飛び歩の餌食」【将棋の格言】

序盤でポイントをかせごう!「飛車先の歩交換3つの得あり」「桂馬の高飛び歩の餌食」【将棋の格言】

ライター: 渡部壮大  更新: 2018年01月31日

今回も2つの格言を見ていきます。

・飛車先の歩交換3つの得あり
・桂馬の高飛び歩の餌食

「飛車先の歩交換3つの得あり」は飛車先の歩を交換することは3つのメリットがあるという意味です。そのメリットとは

(1)1歩を手持ちにすることができる
(2)飛車が敵陣に直射する
(3)攻め駒をスムーズに進めることができる

の3つです。

【第1図】

第1図は相居飛車戦において飛車先を切った局面です。

まず①の利点は明らかでしょう。持ち歩が0と1の差はかなり大きいです。自分だけ飛車先を切って1歩持つ状況になれば作戦勝ちを目指しやすいです。

②の効果は2八の飛が2三に直射しているため、後手は3二金の守りが必須です。金を動かすことができませんし、のちに桂や香が手に入れば▲2七香や▲1五桂の攻めを狙うことができます。ただし、相居飛車なら3二金の形は自然ですので、それほど損にならないことも多いです。

③については、本来なら2五にあった歩がなくなったことでこの地点に銀や桂を進めることができます。2九の桂を将来3七~2五へとスムーズに進めることも可能ですし、3九の銀を3八~2七~2六~2五と進む棒銀も狙えます。

【第2図は△7四歩まで】

ただし、飛車先の交換は位が消えるというデメリットもあります。第2図で▲5四歩と突けば飛車先の歩を交換できることになりますが、△4四歩とされて▲5三歩成△同銀右のような展開は、手数を掛けた位が消えてしまうことになります。5五の位は後手の駒の働きを押さえている意味もあるので、交換するのが得とは言い切れません。

「桂馬の高跳び歩の餌食」は、桂は歩で狙われやすいという意味です。桂は前に利かず、後戻りもできませんので、歩で取られやすい駒です。単騎で▲4五桂(▲6五桂)と跳ね出すと△4四歩(△6四歩)と歩ですぐに取られる形になるので、調子良く跳ねても取られて失敗ということになってしまいます。

【第3図は△7三桂まで】

桂の狙われやすさを見ていきます。第三図は後手が△7三桂と跳ねたところですが、ここで▲7五歩と突く手が厳しいです。△同歩は▲7四歩ですし、△8四飛も▲9五角があります。飛車先交換をして1歩持っておくと、こういった攻めも可能になります。後手は△6三銀や△6三金と受けられる形、もしくは△9四歩を突いておかないといけません。

ただし、最近は将棋の常識も変わってきています。従来は桂馬の高跳び歩の餌食となるため指せなかった単騎の桂跳ねが成立する場合があると分かってきました。

【第4図は△3三銀まで】

1年ほど前から流行してきた仕掛けです。従来、第4図で▲4五桂は△2二銀と引かれて、いずれ△4四歩で取られてしまう形なので、無理筋とされてきました。ただし場合によっては桂損よりも後手の歩切れや陣形の乱れの方が大きく、桂を取れれば良いというわけではないと発見されました。格言も時と場合によるという例ですね。

【第5図は▲8八飛まで】

第5図は髙﨑一生六段(後手)の実戦例から。ここから△3六歩▲同歩△同飛で1歩交換をしました。この場合はあとで手順に△3四飛と石田流の形にできるのもポイントが高いです。

【第6図は△2五桂まで】

進んで第6図。先手も8筋の歩を切りましたが、後手も2筋の歩を切りました。後手は2、3筋で2歩手持ちにし、攻めやすい形です。歩をなくしたことで3五銀、2五桂と配置して先手の玉頭にプレッシャーを掛けています。歩交換が3つの得になっているのがよく分かります。

将棋の格言

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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