ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2018年01月16日
今回は2つの格言を見ていきます。
玉の守りは金銀3枚
攻めは飛角銀桂
この2つの格言はセットで覚えておくと良いでしょう。攻め駒が飛角銀桂であるなら、玉の周りに配置する守り駒は金2枚と銀1枚ということです。多くの戦型の理想的な形であり、将棋の基本的な考え方です。
【第1図】
最近はあまり見かけなくなってしまいましたが、第1図は矢倉▲4六銀▲3七桂で理想型の一つです。一時期は大流行し、タイトル戦でも多く見られた形。ここで先手の守り駒は7七銀・7八金・6七金です。加えて6八の角も玉頭に利いています。
飛車を切っても王手で打たれない形で、攻めに専念しやすい形が好まれました。攻め駒は3八飛・6八角・4六銀・3七桂に加え、1八香もどこかで使うことができます。ここから先手は▲2五桂と跳ね、▲3五歩~▲1五歩と攻めていけば全軍躍動です。
【第2図】
続いて第2図は矢倉への有力な対策として、将棋ソフトから発見された居角左美濃急戦です。基本的には後手の作戦ですが、ここでは便宜上先手としてみます。守り駒は7八銀・6九金・5八金の3枚。矢倉と比べて手数は掛からないものの、なかなかの堅さを誇ります。
一方の攻め駒は2八飛・8八角・5六銀・3七桂の4枚。ここから▲4五歩~▲3五歩のように総攻撃を仕掛けていきます。
【第3図】
振り飛車からも一つ紹介します。第3図は江戸時代からある「石田流」の本組です。近年は大駒が目標にされやすいことからここまで組み上げることは減りましたが、理想型の一つであることには変わりありません。
この場合守り駒は3八銀・4九金・5八金の3枚。攻め駒は7六飛・9七角・5六銀・7七桂の4枚です。桂を攻めに使いやすいのが石田流本組のメリットです。相手の陣形次第ですが、▲6五歩からさばきにいくのがこの作戦です。
【第4図】
もちろん格言は考え方の一つですから、時と場合によります。第4図は対振り飛車に用いられやすい松尾流穴熊です。これは守り駒が8八銀・7九銀・7八金・6七金の4枚。攻め駒が2八飛・6八角・3七桂の3枚です。いわゆる「四枚穴熊」で、非常に玉が堅いことがメリット。
暴れてしまえば玉の堅さがモノを言うのですが、銀が攻めに参加していない分、押さえ込まれてしまう展開には注意が必要です。
【第5図】
第5図は急戦矢倉の一つで、「二枚銀急戦」と呼ばれる形です。守り駒は7八金・5八金の金2枚だけで非常に薄い形です。一方攻め駒は2八飛・8八角・6六銀・4六銀・3七桂の5枚。攻めでポイントを挙げてしまえば玉の薄さをカバーできるという考え方です。指しこなすのは難しいのですが、攻めっ気の強い人にはオススメの作戦です。
終盤の入り口でどちらにも使えていない駒があったら、それは「遊び駒」と呼ばれるものです。一方だけに遊び駒がある場合、大抵形勢も苦しいと見て良いでしょう。まずどの駒が攻め駒で、どの駒が守り駒なのかを見るのが形勢判断のスタートです。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段