ライター一瀬浩司

△1三同香にはどう対応する? 雀刺しで、矢倉を攻略する方法
ライター: 一瀬浩司 更新: 2017年11月20日
今回のコラムも、雀刺しから矢倉を攻める指し方を見ていきましょう。それでは第1図です。
【第1図は▲1三桂成まで】
これまでのコラムで、△1三同桂、△1三同玉、△3一玉、△3三玉の応手はどうなるかを見てきました。この四つはすべて先手が優勢になりましたね。残る応手は、△1三同香、△1三同銀の二つです。
それでは、今回は△1三同香を見ていきましょう。先手は当然、▲1四歩と突き出していきます。このままですと、▲1三歩成△同桂▲同香成と端を破られてしまいますので、後手は△1四同香と取り、先手も▲同香(第2図)と香を取ります。
【第2図は▲1四同香まで】
第2図からは、次に▲1二香成と成り込まれてしまいますので、後手はそれを防がなくてはなりません。後手の手段としては、飛車筋を止める△1五歩と、香取りに打つ△1三歩の二つが考えられます。順に見ていきましょう。
まずは飛車先を止める△1五歩です。▲2五歩と突き、△同銀に▲1五飛(第3図)と2四の利きをそらせて飛車を走る手も見えるところです。
【第3図は▲1五飛まで】
銀取りと同時に、▲1二香成もあってこれにて先手よし、と言いたくもなりますよね。ですが、本当にそれでよいでしょうか?局面をよく見てください。1五の利きは確かに銀の利きはなくなりましたが、ほかの駒の利きはありませんか?4二に角がいますよね。△1五同角と飛車を取られて、ハイ、それまでとなってしまいます。
では、△1五歩に▲1三歩はどうでしょうか?▲1二歩成の狙いですが、△1三同桂▲同香成△同銀と進んでもうひと押しが足りないところですね。では、どうするか?といいますと、もう一つ上に▲1二歩(第4図)と垂らす手が好手です。
【第4図は▲1二歩まで】
▲1一歩成を受けるのは、△1三桂か△1三桂打ですが、△1三桂には▲1一歩成△同玉▲1三香成とすれば、△同銀には▲同角成で大成功です。第4図から△1三桂打にも▲1一歩成と成り捨て、△同玉に▲2五歩の突き出しが絶好の一手となります。
△2五同桂には▲1一香成と玉を取ってゲームセットですので、△2五同銀しかありませんが、▲1三香成とすれば、△同桂▲同角成で先手優勢となります。よって、第2図で△1五歩には▲1二歩と垂らして先手優勢です。
次に、第2図から△1三歩はどうでしょうか?単純に▲同香成△同銀▲同角成△同桂▲1四歩と攻めるのは、△1五香の切り返しがあってうまくいきません。▲1三歩成△同玉▲1六歩としても、△2七角▲2八飛△1六角成で攻めきれません。工夫もなく、単純に攻めるのはうまくいきません。
ではどう工夫をしていきましょうか。後手陣の守備駒の位置を見てみましょう。もし2四の銀がいなければ?▲1三香成△同桂▲同飛成と突破することができますよね。そこで、▲2五歩(第5図)の突き出しが好手となります。
【第5図は▲2五歩まで】
△2五同銀には▲1三香成と端を突破できますし、△1四歩と香を取られても、▲2四歩と銀を取って銀香交換の駒得になり、これも先手よしとなります。
矢倉の崩し方


監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。