ライター一瀬浩司
急戦矢倉で攻め込もう!▲4五歩から仕掛けるときに気をつけることとは【矢倉の崩し方 vol.18】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2017年08月10日
前回のコラムでは、急戦矢倉にはどのような形があるのかをご紹介いたしました。
今回のコラムからは、いよいよ急戦矢倉でどう攻めていくか、をご紹介していきます。それでは第1図をご覧ください。
【第1図】
急戦矢倉でいちばんオーソドックスな形から仕掛けていく指し方をいろいろと見ていきましょう。まずは、▲4五歩△同歩▲同桂(第2図)と仕掛けるのはどうでしょう?
【第2図は▲4五同桂まで】
右四間飛車のときも4五から攻めていきましたし、右桂の活用も図った自然な攻め方です。△4四銀には、▲4六銀(第3図)として次に▲5五歩からの総攻撃を狙っていきます。
【第3図は▲4六銀まで】
こうなれば6六の銀と4六の銀と、2枚の銀が前進して、8八にいる角の応援もあって迫力のある攻めが期待できそうですよね。また、△4四銀に対しては、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛(第4図)と、じっと2筋を交換しておくのも有力です。
【第4図は▲2九飛まで】
第4図で、あれ? 4五の桂がタダじゃないの? と思われる方も多いでしょう。もちろんこれはうっかりではありません。▲4六歩と打てば4五の銀に逃げ場所がなく、銀桂交換の駒得になります。4七に銀がいることによって、間接的に4五の桂を支えているのです。ただし、注意していただきたいのは、もし、後手の5筋の歩が5三にいる場合は、▲4六歩に△5四銀と食い逃げされてしまいますので、その場合は△4四銀に対し、すぐに▲4六銀や▲4六歩と桂を支えなければなりません。
では、第3図で、△4五銀▲同銀△4四歩と進めれば、先手の銀が死んで結局桂損になってしまうんじゃないの?と思われる鋭い方もいると思います。しかし、もちろんそんなあっさり悪くなりません。ちゃんと用意の一手があります。
ぜひすぐに第5図を見るのではなく、△4四歩まで進めた局面を盤上に並べて考えてみてください。もし先手に6六の銀がいなければ、△4五歩と銀を取られても▲1一角成と香を取りながら角を成ることができますよね? そのことに気づけば答えにたどり着けると思います。
▲6五銀(第5図)と立つ手が用意の好手です。
【第5図は▲6五銀まで】
△4五歩なら▲1一角成と成り込めますし、このまま捨て置けば、▲4四銀や▲5四銀右(左もあり)と、攻め込んでいくことができます。
ここで、あれ? ▲6五銀じゃなくて▲5七銀と引いたほうが先手陣が堅くなるしいいんじゃないの? と思われる方もいるかもしれません。それは、△2二角や△3三金上と4四を守られたときに、今度は▲5四銀と出る手がなくなっているので銀が助からなくなります。 次回のコラムでは、第1図から▲4五歩△同歩▲同桂△4四銀に▲4六銀や▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛と進めた後の展開を順に見ていきましょう。と、言いたいところですが、残念ながら第3図のようには進みません。
どういうことか、次回のコラムで見ていきましょう。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。