急戦矢倉ってどんな戦法?羽生三冠も第87期棋聖戦で採用していた【矢倉の崩し方 vol.17】

急戦矢倉ってどんな戦法?羽生三冠も第87期棋聖戦で採用していた【矢倉の崩し方 vol.17】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2017年08月07日

前回のコラムから、矢倉囲いに対する急戦矢倉という戦法をご紹介しております。今回は、その急戦矢倉にはどのような形があるのかを見ていきましょう。まずは第1図です。

【第1図】

これは前回ご紹介した形ですね。先手でも、後手でもよく使われる陣形です。続いては第2図です。

【第2図】

もし、7八金と6九玉が入れ替わっていたらどこかで見た形になりませんか? 振り飛車に対する、5七銀左型の急戦を思い出させますよね。第1図と大きく違うところは、銀が6六にいないので、角筋が通っています。

また、第2図から、▲6六銀▲4七銀とすれば、第1図の形にすることもできます。この形は、後手番で使われることが多いです。というのも、先手で急戦矢倉を目指す出だしのときは、初手から、▲7六歩△3四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀(第3図)。

【第3図は▲7七銀まで】

こう進むことが圧倒的に多いです。すると、すでに銀が7七に上がっておりますので、第2図のような形には組みにくくなります。先手番で指すときは、初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二銀▲5六歩△5四歩▲5八金右△6二銀(第4図)。

【第4図は△6二銀まで】

このように、振り飛車のような出だしから、後手が矢倉に組んできたときくらいでしょうか。これなら、先手は左銀がまだ7九のまま配置を決めていませんので、好きなところに動かすことができます。続いては第5図です。

【第5図】

守りの銀どころか、金まで繰り出して、超攻撃的な布陣ですね。この形も後手番で指されることが多いですが、先手番でも使うことができます。 第1図から、▲5五歩△同歩▲同銀△5四歩▲6六銀と5筋の歩を交換して、▲5六銀▲4七金と進めればこの形になります。 ただ、第1図まで組んだ場合、次回のコラムからはこのまま攻めていく指し方をご紹介しますので、第1図から第5図に進展させることはあまりないでしょう。後手番の場合は、▲5五歩△同歩▲同角(わかりやすいように先手の符号で指し手を進めています)から▲5六銀▲8八角と角を左側に引いて、▲5七銀▲6六銀と繰り出していきます。

玉が薄いので、プロではあまり指されていませんでしたが、昨年行われた第87期棋聖戦の第4局で、1勝2敗とカド番に追い詰められた羽生善治棋聖が後手番で採用し、永瀬拓矢六段に勝利しました。この対局まで、仕掛けた局面の前例が8局しかなく、しかも最新の将棋が平成16年と12年前とあっては、羽生棋聖の作戦に永瀬六段もきっと意表を衝かれたことでしょう。

タイトル戦で現れたことで、また注目を集めるかと思いましたが、この対局以降の実戦例はないようです。現在では、矢倉に対して左美濃からの急戦が流行していますので、それに比べると玉が薄い急戦矢倉は好まれないのでしょう。本コラムでは、第1図の形と第2図の形からの攻め方をご紹介します。

それでは、次回から第1図からの攻め方をご紹介していきます。

矢倉の崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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阿部光瑠

監修阿部光瑠六段

棋士・六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。
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