「9一銀」から美濃囲いを攻略。基本図を理解することで勝率もぐっとアップ【美濃囲いの崩し方 vol.10 応用編】

「9一銀」から美濃囲いを攻略。基本図を理解することで勝率もぐっとアップ【美濃囲いの崩し方 vol.10 応用編】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2017年02月27日

今回は7一を狙う指し方に、端を絡めた攻め方をご紹介いたします。まずは第1図をご覧ください。

【第1図】

これまでは、▲6二歩と打つ攻め方をご紹介してきましたが、今回は6七に先手の歩があるため、二歩になるので打てません。かといって、▲5二歩は確実な攻めですが、少しスピードが遅い攻めです。

歩が打てないなら代わりの駒を打てばよいのですが、駒台を見てみると、歩以外には銀と香がありますね。▲6二銀と打っても△同金と取られると、銀を使ってしまったために7一へ打つ駒がありません。ここは、▲6二香(第2図)が正しい攻め方となります。

【第2図は▲6二香まで】

△6二同金は、もちろん▲7一銀で後手陣は崩壊しますので、△7一金と寄る一手ですが、ここで後続の手がなければいけません。角があれば、▲5三角と打って、▲7一飛成△同玉▲6一香成の寄せを狙うことができますが、あいにく駒台に乗っているのは銀ですので、その攻めはできません。▲6一銀と打ち、△同銀なら▲同香成で成功ですが、放置されると▲7二銀成としても△同玉で銀ははがせますが、次の攻めがなくいまひとつです。

さて、ほかに攻めが見当たらなさそうですが、次の手は知っていないと指せないと思います。▲9二歩と香頭にたたく手がこの場合の好手です。△同玉と取るのは▲7一飛成で金がタダですし、放置するのも▲9一歩成と香を取りながらと金ができ、次に▲9二と△同玉▲7一飛成も残っているので、ここは△9二同香と取る一手です。そこで9一が空いたので、▲9一銀(第3図)が寄せの好手となります。

【第3図は▲9一銀まで】

△9一同玉に▲7一飛成と金を取れば、次に▲8二金までの詰めろになります。後手は△8二銀と受ける一手ですが、▲7二竜とさらに銀を取ることができ、攻めは大成功です。

なお、第1図からすぐに▲9二歩でも同じように見えますが、今度は△9二同玉と取られて、そこから▲6二香と打っても△同金で▲7一銀が王手にならないのでうまくいきません。場合によっては、どちらを先にしてもよい場合もありますが、指し手の順番を考えることはとても大切ですので、実戦でもどちらでもいいや、ではなく、しっかり手を止めて一呼吸おいてから指すことが大事です。

さて、次は第4図です。

【第4図】

今度は先手に持ち駒が銀1枚しかありません。6二や5二に銀を打っても、いずれも△同金と取られて続く攻めがありません。ほかに打つ駒もありませんし、攻めもまったくなさそうに見えます。

しかし、盤上をよく見ると攻めの駒が1つ落ちています。そうです、▲9五香と歩を取る手が正解です。△同香に、手に入れたばかりの歩を▲6二歩と打って、△7一金に▲9一銀(第5図)と打てば、第3図と似たような形になりましたね。

【第5図は▲9一銀まで】

△9一同玉に、▲7一飛成△8二銀▲7二竜で大成功となります。6二に駒を打って、7一に金を寄らせた形は、9一に銀や角を打てれば成功、と知っておけば、第4図で▲9五香と、香を犠牲に歩を手に入れる発想が自然と浮かんでくるようになると思います。

第4図でもし、9筋に先手の歩が9六、後手の歩が9四にいる形でしたら、▲9五歩△同歩▲同香△同香▲6二歩△7一金▲9一銀と攻めていきます。

第4図からの攻め方を知っていれば、9筋を突き捨てれば同じ形になり、攻めていけることに気が付きます。なので、局面が攻めの基本図から逆算された形になれば、ここでこう指していけば美濃囲いを崩せそうだな......と、かなり前からイメージできるようになり、勝率もぐんとアップしていくはずです。

美濃囲いの崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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阿部光瑠

監修阿部光瑠六段

棋士・六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。

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