ライター一瀬浩司

「相手の形や持ち駒をみきわめる」のがポイント。美濃囲いを端から攻略するコツ(2)【美濃囲いの崩し方 vol.7】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2017年02月13日
今回のコラムも、美濃囲いを端から攻める指し方をご紹介していきます。まずは第1図をご覧ください。
【第1図】
前回は持ち駒の歩が2枚で、端の関係は先手が9五歩と詰めている形でした。今回は持ち駒が桂と歩3枚と、桂と歩が1枚ずつ増えています。美濃囲い側も9四歩と端を受けている形です。
まずは▲9五歩と突き、△同歩に▲9三歩△同香と、前回と同じように攻めていきます。ここから前回同様に▲8五桂と跳ね、攻めてみましょう。次に▲9三桂成△同桂▲9四歩が厳しい攻めとなり、もちろんこの攻めも有力です。しかし、後手にも受けはあり、△8四歩(第2図)と突く手が受けの好手になります。
【第2図は△8四歩まで】
▲8四同角には△8三銀と上がり、▲9三桂成△同桂▲6六角△8四歩となると、美濃囲いの形は崩せましたが、後手にはもうひと頑張りされてしまいます。△8四歩に対して、単に▲9三桂成は△同桂なら▲9四歩と打てますが、8四に歩を進めた効果で、△9三同玉と取ることができ、これも決まった、という感じではありません。
先手の持ち駒が歩2枚だけでしたら、美濃囲いの形を大いに乱して、成功といえますが、今回の場合はもっと厳しい攻めがあります。それではご紹介していきましょう。第1図から、▲9五歩△同歩▲9三歩△同香に▲9四歩とたたく手が好手です。△同香に▲8六桂(第3図)と打てば、後手は9四の香取りを受ける手段がありません。
【第3図は▲8六桂まで】
そして、次に▲9四桂と取れば王手になり、これも非常に厳しい攻めになります。以下、△9二玉には、▲9五香と単に走ってしまうと、△9三歩で粘られてしまいますが、「敵の打ちたいところへ打て」の格言通り、▲9三歩が好手で、△同桂▲9五香(第4図)が、次に▲8二桂成△同玉▲9三角成の狙いがあって厳しい寄せとなります。
【第4図は▲9五香まで】
▲9四桂に、△7一玉と逃げても8二にいつでも駒を打てる形になりますし、▲8二歩の桂取りも厳しい攻めです。
また、もっと強力な駒を持てば、▲4四角の王手が非常に厳しい手になります。例えば先手が銀を持っていれば、▲9四桂△7一玉に▲4四角と王手をして、△6二歩なら▲8二銀で詰みですし、△6二金なら▲5一銀や▲5三銀のほかに▲8二桂成というとてもかっこいい好手もあり、△同玉は▲6二角成と金を取れますし、△6一玉も▲5三銀と打てばあっという間に寄り形と なってしまいます。
また、第1図から▲9五歩△同歩▲9三歩△同香のときに、じっと▲8六桂と打つ攻め方も有力です。次に▲9四歩と打てば、△同香には▲同桂で第3図と同じことになりますし、放置するのも▲9三歩成△同桂▲9四歩が厳しいです。
終盤の激しい一手争いのときには、じっと▲8六桂では速度負けしてしまうこともありますが、攻める形によっては、▲9四歩を後にした場合の方がよいこともあります。今回の第1図は、わかりやすいように7七桂と6六角を設置して、後手に持ち駒がありませんでしたが、例えば第5図のような形では、▲9四歩△同香▲8六桂では、△8五銀と受けられ、▲9四桂△同銀で大したことがありません。
【第5図】
第5図では単に▲8六桂のほうがよく、△8五銀には▲7七桂と跳ねて、△7六銀には▲9四歩、△8六銀には▲同歩として、次に▲8五桂と香取りに跳ねながら攻める手も残っています。ただし、▲9四歩△同香が入っていると、次に▲8五桂と跳ねても香取りにならず、空振りしてしまいますので、攻めるときは、相手の形や持ち駒を見ながら攻めることが大切です。
美濃囲いの崩し方


監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。