【今日は何の日?】11月24日は「棋界のプリンス」真部九段の命日。死後、彼の「△4二角」が升田幸三賞を受賞

【今日は何の日?】11月24日は「棋界のプリンス」真部九段の命日。死後、彼の「△4二角」が升田幸三賞を受賞

ライター: 君島俊介  更新: 2016年11月24日

真部一男九段は1952年2月16日生まれ。1973年4月に四段昇段。1988年4月に八段。四、五段当時、中原誠名人に3連勝して「将来の名人候補」と称された。1982年度の第16回早指し選手権戦で棋戦初優勝を果たした。

文筆にもすぐれ、将棋世界誌に「将棋論考」を10年以上にわたって連載。1998年に第10回将棋ペンクラブ大賞の一般部門の大賞を受賞した。2006年には「将棋論考」のうち、升田幸三実力制第四代名人の好局(30局分)をピックアップしてまとめた著書『升田将棋の世界』で第18回将棋ペンクラブ大賞の著作部門の大賞を受賞している。容姿端麗で「棋界のプリンス」とも呼ばれた。時代劇に出演するなど、盤上だけでなく、盤外でも華やかな活躍を見せた名棋士のひとりだ。

2007年10月30日に指された、第66期C級2組6回戦の▲豊島将之四段(現七段)-△真部戦が真部の絶局となった。私はこの日のネット中継を担当した。対局前に対局室に入ると、真部の顔が色白く、やつれていたのを覚えている。

対局は真部のゴキゲン中飛車に豊島が丸山ワクチンと呼ばれる角交換策で対抗した。駒組みが続く中、昼食休憩前の11時58分に真部が投了してしまう(図)。このときすでに対局を指せる体調ではなかったのだ。対豊島戦から1ヵ月たたない2007年11月24日、転移性肝腫瘍のため55歳の若さで帰らぬ人となった。同日付で九段が追贈された。

真部が亡くなった3日後に、第66期C級2組7回戦▲村山慈明四段(現七段)-△大内延介九段戦で図の局面が再び現れた。大内の放った△4二角が△9二香から△9一飛の地下鉄飛車と連動させて端を狙う妙手だった。実は、真部は対豊島戦のときに△4二角を読んでいた。だが、相手が長考することが明らか(△4二角に村山は1時間50分考えた)なので指さずに投了したという。

真部は対局では指さなかった△4二角の妙手で、2008年の第35回将棋大賞で升田幸三賞特別賞を受賞した。升田実力制第四代名人は角使いの名手である。『升田将棋の世界』のあとがきに「升田将棋にあこがれた」と記した真部は、泉下で升田の名を冠した賞を自陣角の妙手で得たことを喜んだことだろう。

今日は何の日?

君島俊介

ライター君島俊介

2006年6月からネット中継のスタッフとして携わる。順位戦・棋王戦・棋聖戦などで観戦記も執筆。将棋連盟ライブ中継の棋譜中継で観る将ライフを楽しむ日々。

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