観戦記でしか味わえないことがある?小説感覚で楽しめる観戦記の魅力を山口絵美菜女流1級がご紹介!

観戦記でしか味わえないことがある?小説感覚で楽しめる観戦記の魅力を山口絵美菜女流1級がご紹介!

ライター: 山口絵美菜  更新: 2018年11月01日

みなさんは「観戦記」を読んだことがありますか?棋譜とともに対局者の紹介や当日の様子、手の解説が記されている「観戦記」。手に汗握る勝負の行方を臨場感たっぷりに描き出し、難解な将棋を紐解いてくれる存在です。今回はそんな「観戦記」の魅力をご紹介します!

「観戦記」の歴史は遡ること明治時代。世襲制名人から実力制名人に移行した将棋界で、新聞社が自社の主催する棋戦の棋譜を掲載したのが始まりです。今でこそ日本将棋連盟モバイルや動画でのライブ中継で対局の模様を観戦することができますが、当時は対局室の様子を伝える唯一の橋渡しでした。

現代でも新聞社ごとに主催する棋戦の観戦記が掲載されています。プロ公式戦の棋譜の全てが一般向けに公開されているわけではないので、応援している棋士や女流棋士がどんな将棋を指したのか?といった当日の様子などを知ることができる貴重な情報源であることに変わりはありません。

「観戦記」を書くのは「観戦記者」と呼ばれる専門の記者。私も今期(第77期)のA級順位戦で、毎日新聞に掲載される観戦記を担当し、観戦記者としてデビューをしました。そこで、今回は毎日新聞の観戦記を例に観戦記の楽しみ方をご紹介します!

yamaguchi_kansenki01_03.jpg
A級順位戦で観戦記者を務める山口女流1級 撮影:虹

新聞観戦記の特徴は何日間かに分けて一局の棋譜を掲載するということ。先の読めない勝負の臨場感が味わえるので、連載小説を読み進めていくような楽しみ方ができます。一方で数手ずつの棋譜掲載になるので、楽しむのにちょっと工夫が必要です。

「観戦記」は大きく分けて「局面」「棋譜」「本文」で構成されています。

局面

その日の「開始図」「終了図」の他に、「本文」の解説の中で長い変化や複雑な変化などがある時はわかりやすいように「途中図」を入れる場合もあります。「本文」を読み始める前に「開始図」を見て、前日までの進行を確認しておくと「棋譜」が頭に入りやすくなると思います。「本文」を読み終わった後に「終了図」を見て、「次の手はなんだろう?」と考えてみるのもオススメです!

yamaguchi_kansenki01_01.jpg
撮影:飛龍

棋譜

「開始図」からの棋譜です。実戦での指し手や、どの手にどれくらい考えたかがわかる消費時間、「好手」「疑問手」「悪手」の印が載っています。頑張って頭の中で棋譜を並べてみたり、実際に盤・駒を使って並べて見ましょう。「本文」での解説が理解しやすくなりますし、棋譜をなぞることで臨場感が増します。

本文

本文の初めに「小見出し」といって、その日のタイトルがついています。本文には得意戦型や棋風、最近の調子などの「対局者紹介」や両者の対戦成績、関係性といった「勝負の背景」、本譜での戦型や手の意味、形勢などの「解説」、当日の対局者や対局室の様子、出来事が書かれています。担当する観戦記者ごとに着眼点が異なるので、「誰の観戦記か」ということも合わせて楽しめるところです。また、当日の控室の検討や感想戦での検討、後日談や観戦記者自身の検討を踏まえての解説が展開されているので、将棋の内容もよくわかります。あまり身構えず、連載小説を読むような気持ちで覗いてみてください!

yamaguchi_kansenki01_02.jpg
撮影:虹

以上が新聞観戦記の楽しみ方です。順番としては(1)局面(2)棋譜(3)本文の順に読むのが一番わかりやすいと思います。記事をクリッピングして、一局分一気に読むというのもオススメですよ!

月ごとの観戦記情報はこちらでチェックできるので、ぜひご参照ください!

観戦記の魅力

山口絵美菜

ライター山口絵美菜

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています