藤井、名人3連覇達成 ~名人戦振り返り~

藤井、名人3連覇達成 ~名人戦振り返り~

ライター: 渡部壮大  更新: 2025年06月06日

 藤井聡太名人に永瀬拓矢九段が挑戦した第83期名人戦七番勝負。永瀬は王将戦に続く連続挑戦で、名人戦に登場するのは初となる。

第83期名人戦七番勝負第1局

 第1局は東京都文京区「ホテル椿山荘東京」にて。永瀬が先手で角換わり腰掛け銀から前例のある将棋となり、研究勝負になる。難解な形勢だったが、藤井の攻めがヒットしてリードを奪う。

【第1図は▲2四同歩まで】

 永瀬も迫っているものの、ここで藤井は読み切りの収束を見せる。△9六桂▲同香△9七金▲7九玉△8八角▲6九玉△6八金以下、一気の即詰みに打ち取った。攻防手や7七の飛車を取っての安全勝ちも見えるが、さすがの詰将棋力だ。開幕戦は藤井が制する。

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写真:紋蛇

第83期名人戦七番勝負第2局

 第2局は東京都大田区「羽田空港第1ターミナル」にて。永瀬の趣向で変則的な角換わりとなり、先手の藤井が打開の手段を探る展開となる。戦いが起こり、局面は激しい攻め合いに。

【第2図は△8二飛まで】

 金をはがされたが、先手は手番を握ったのが大きい。▲5四桂の王手がシンプルながら厳しく、△3一玉に▲2三銀と攻めて、後手は受けきれない形になった。以下も押し切って藤井が2連勝。

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写真:牛蒡

第83期名人戦七番勝負第3局

 第3局は大阪府泉佐野市「ホテル日航関西空港」にて。序盤の駆け引きから、ガッチリ組み合う矢倉戦となる。中盤の押し合いから、徐々に藤井がリードを奪っていった。

【第3図は▲4五歩まで】

 じっと△6四歩が距離感を見切った一着。▲2四歩△同歩▲2三歩△同金▲3五角と角を動かしたものの、やはり△6五歩が厳しい。▲7一角成に△6六銀と畳みかけて、後手勝勢だ。藤井が快勝で3連勝。

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写真:飛龍

第83期名人戦七番勝負第4局

 第4局は大分県宇佐市「宇佐神宮」にて。第2局同様に変則的な角換わりとなるが、初日で千日手が成立。二日目朝からの指し直しとなった。指し直し局は3時間近い持ち時間の差をものともせず、藤井が優勢となる。だが、終盤で危険な決め方を選び、際どい勝負に。

【第4図は△8八飛まで】

 ここは永瀬が逆転に成功している。▲7三香成△同銀に▲6三銀!という妙手で詰みがあった。実戦は▲4八玉△6八とで、そこでも先述の筋はあったが、一分将棋の中では見つけられず▲7四金打とした。以下△5八と▲同金△3七香成▲同玉△4一桂としたが、▲6八香がしっかりした受けで先手の勝ち筋に入った。△3七香成ではじっと△4一金なら難解な終盤が続いていたようだ。二転三転の終盤戦を制し、永瀬がシリーズ初勝利。

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写真:夏芽

第83期名人戦七番勝負第5局

 第5局は茨城県古河市「ホテル山水」にて。角換わりから右玉となるが、打開が難しくなり二日目の午前中に千日手が成立。指し直し局も先後を入れ替えて角換わりの右玉となり、またも打開が難しい展開。ようやく戦いが起き始めたのは、二日夕方の休憩を明けた頃だった。

【第5図は△5三玉まで】

 盤面を制圧して局面ははっきり後手良しだ。先手は指す手が難しそうだが、▲7四歩が勝負手。△6五桂と呼び込んで損なようでも、▲7六銀△5七桂不成▲同金△7六馬▲9二桂成△同飛▲7七香△4三馬▲6五歩と進んでみると、後手も嫌な形になってきている。以下も秒読みの競り合いが続いたが、混戦になってからは正確な指し手を重ねた藤井が逆転勝ちを収めている。

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写真:八雲

 これで藤井は4勝1敗で防衛。名人3連覇、タイトルは通算29期目となった。敗れた永瀬だが、王位戦七番勝負の挑戦者になっており、二人の戦いはまだまだ続く。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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