ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年05月19日
名人戦は藤井聡太名人の強さが光る内容で3連勝となっています。竜王戦ランキング戦では奨励会員の山下数毅三段が大活躍。この結果で四段昇段に大きく近付いています。
【第1図は▲7九角まで】
第1図は第83期名人戦七番勝負第3局(▲永瀬拓矢九段△藤井聡太名人)。駆け引きの末に、矢倉戦となった本局。△5六歩が「敵の打ちたいところへ打て」、で中央を押さえて5五の銀が安定しました。先手は▲5八歩と受けましたが、△4四歩▲1六歩△2二玉となり、後手の模様が良い将棋に。以下も会心の指し回しで、藤井名人が完勝しています。これで3連勝と、防衛まであと1勝に迫りました。
写真:飛龍
【第2図は△7三同金まで】
第2図は第10期叡王戦五番勝負第3局(▲伊藤匠叡王△斎藤慎太郎八段)。難解なねじり合いが続いています。▲6八玉が「玉の早逃げ八手の得」の手筋。3筋の攻めから遠ざかり、△4九桂成なら▲7三角成と取り返せるようにしています。実戦は以下も難解な戦いが続きましたが、粘り強い指し手を重ねた伊藤叡王が競り勝ち、2勝1敗で初防衛に近付きました。
写真:琵琶
【第3図は△6五銀まで】
第3図は第36期女流王位戦五番勝負第2局(▲福間香奈女流王位△伊藤沙恵女流四段)。先手ペースの戦いでしたが、後手も簡単には崩れずに熱戦となっています。先手もひるんでいると逆転されかねません。▲3六桂△4六飛▲4四桂打が「要の金を狙え」の寄せ。これで後手玉が見える形になりました。△3七とは勝負手ですが、▲3二桂成△同玉に▲4三銀が鋭い寄せで、△同玉▲4四銀と上から押さえる形を実現して、後手は粘るのが難しくなってきました。
写真:紋蛇
【第4図は▲5三歩まで】
第4図は伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦挑戦者決定リーグ白組(▲都成竜馬七段△永瀬拓矢九段)。先手が攻め立てており、際どい終盤戦です。金を見捨てて△3五歩▲5二歩成△3四玉が「中段玉寄せにくし」の負けにくい指し方。これで後手玉は簡単には寄りません。以下▲4二とに△6七銀と反撃し、際どい終盤が続きましたが、最後は後手が競り勝ちました。白組リーグを優勝した永瀬九段は、紅組優勝の佐々木勇気八段と挑戦者決定戦を行います。
写真:夏芽
【第5図は△6五歩まで】
第5図は第38期竜王戦5組ランキング戦(▲山下数毅三段△高田明浩五段)。この△6五歩を待って▲4七角が好手。△6六歩に▲5七金と活用します。△6七歩成▲同金寄△6五歩に▲5六角で「攻めは飛角銀桂、守りは金銀3枚」の理想的な陣形を作り上げました。以下も熱戦が続きましたが、作戦勝ちを生かした先手の快勝となっています。山下三段は奨励会員として5組を優勝し、決勝トーナメントに進出する快挙です。
写真:虹
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段