ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年04月14日
福間香奈女流名人に西山朋佳女流三冠が挑戦した岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負。両者は2024年度は8つのタイトルのうち、半分の4棋戦で番勝負を戦うこととなった。
第1局は大阪府高槻市「関西将棋会館」にて。角交換系の相振り飛車から先手が攻めていくが、後手も際どく耐えて反撃に移る。攻めが急所に入り始め、形勢も後手に傾いた。
【第1図は▲6七同玉まで】
先手の囲いを崩し、あとはどう決めるか。△7四銀と飛車を狙うのが攻防に手堅い勝ち方。▲3五飛に△3四飛▲2五飛△2四歩▲5五飛△5二香▲5四歩△同香▲同飛△4五角で、王手飛車を実現させてはっきりした。飛車を手にすれば先手は粘るのが難しい形だ。まずは福間が白星発進。
写真:潤
第2局は島根県出雲市「出雲文化伝承館」にて。先手の福間は5筋位取りから居飛車。西山は振り飛車穴熊に構えるが、福間が中央の厚みからリード。長い中盤となるが、じわじわと先手が指しやすくなっていく。
【第2図は△3一飛まで】
盤面を制圧しているので、先手は後手の大駒のさばきにだけ気を付ければよい。▲5三歩成△同歩▲2三歩で、飛車角を封じ込めに掛かる。△3五歩にも▲5六飛△5一飛▲2二歩成△同銀▲4四歩で、着実に押し込んでいく。以下△1五角▲2六歩△4四歩▲同銀△3三銀▲4三銀成△4二銀▲3二成銀と進んで完封態勢だ。この後も手数は掛かったものの、丁寧に指して先手が形も作らせずに押し切った。これで福間が防衛まであと1勝と迫る。
写真:飛龍
第3局は千葉県野田市「関根名人記念館」にて。相振り飛車から囲いもそこそこに、盤面全体で戦いが始まる。福間の攻めが成功するが、西山も食いついて勝負に持ち込む。
【第3図は△6三同玉まで】
飛車を逃げずに▲4五歩が勝負手。△3三角なら▲5三金の筋が生じる。実戦は△5六歩▲4四歩△同飛▲4六歩△5四飛▲3六角△4九飛▲4八金打で逆転模様となった。後手には本譜以外にも手段はあったが、後手に誤算があったようだ。以下は西山の逆転勝ちとなった、このところタイトル戦で黒星が続いていたが、西山が1勝を返す。
写真:銀杏
第4局は東京都渋谷区「将棋会館」にて。本局は比較的オーソドックスな相振り飛車となる。後手の西山が攻め切れるかどうかの勝負となった。
【第4図は▲2二角まで】
△3五銀が押しつぶしにいった攻め。▲4七金に△2五桂▲2六銀△同銀▲同歩△1六歩が急所。取られる直前の1一の香が働き、攻めがつながる形になった。後手陣は安泰で、こうなれば入玉にだけ気を付ければよく、以下は後手が押し切った。勝負はフルセットへ。
写真:八雲
最終第5局は大阪府高槻市「関西将棋会館」にて。福間の先手で相振り飛車となり、端攻めを成功させてポイントをあげる。西山も入玉含みの粘りで簡単には諦めない。
【第5図は△8四金まで】
4三の銀を取れる形だが、上に逃がすと厄介だ。▲7三角が厳しい寄せ。△8六角に▲8四角成△同歩▲9六金打と厚く攻める。△9五角▲同金△8三桂と懸命に受けるが、▲8五金△同歩で守りの金駒を消してから▲4三成桂と取り、先手勝勢がはっきりしてきた。以下も後手玉を逃がさず寄せ切り、福間が制勝した。
写真:夏芽
2連勝から2連敗の悪い流れを止めて、福間が3勝2敗で防衛。通算14期目の女流名人獲得となった。
ライター渡部壮大