ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2022年02月02日
里見香奈倉敷藤花に加藤桃子女流三段(開幕当時)が挑戦した第29期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負。加藤は挑戦者決定戦で新鋭の野原未蘭女流初段を破った。加藤が本棋戦の番勝負に登場するのは初。両者はこの秋に行われた清麗戦五番勝負でも激突し、シリーズの途中に加藤が奪取を決めている。里見は倉敷藤花戦、清麗戦以外に女流王座戦、女流王将戦でも番勝負を戦うハードな秋だ。
第1局は「関西将棋会館」にて。里見の中飛車に、加藤は▲6六歩~▲6五歩と位を取る珍しい急戦を挑む。角と銀桂の2枚換えとなり、両者の大局観がぶつかる展開に。
【第1図は▲8八角まで】
9筋は押し込んだが、後手は他に駒が前に出ていない。しかし△7四銀打が厚みで押しつぶしにいく一手。▲6六馬△6四歩▲4五歩△6五歩▲7七馬△6六桂▲同金△同歩▲4四歩△6一飛で飛車を急所に使うことができた。こうなると玉の狭い先手は粘りづらく、後手が押し切っている。
写真:日本将棋連盟
第2局からは恒例となっている岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」にて。里見の先手中飛車に加藤は左美濃。図はさばき合いが予想される中盤戦だが、ここから急転直下で大差になってしまう。
【第2図は△8六歩まで】
▲6五桂△同桂▲同銀△同銀▲同飛に△5六銀が激痛の両取り。このあたり里見に錯覚があったようで、▲6一飛成△5七銀不成で後手の角得となり、一気に差が開いてしまった。以下はしっかりリードを守った加藤が危なげなく押し切っている。決着は翌日に行われる最終第3局へ。
写真:日本将棋連盟
第3局は里見の中飛車に第1局同様、加藤は急戦模様。第1局と違い、振り飛車は左金を玉側に寄せて陣形を整えて3筋からの動きを見せた。少し前は加藤にもチャンスのある将棋だったが、第3図は後手に流れが来ている。
【第3図は▲6六同金まで】
△6五銀打が制空権を奪いにいく好手。銀を渡すと▲5二馬の筋で後手も危険だが、すぐに詰むわけではない。実戦は▲6七金引△7六銀▲同金△同角成▲7七香△6五馬と進み、後手が厚い形となった。以下は▲8八玉に△6九金と絡んで押し切っている。
写真:日本将棋連盟
過密日程の中、里見は2勝1敗で防衛。倉敷藤花戦では7連覇、通算12期目の獲得となった。加藤は清麗に続く連続奪取はならず。敗れたとはいえ一時期の連敗は止まり、苦手意識も払拭したことだろう。来年以降も両者の戦いが楽しみだ
ライター渡部壮大