少し前を振り返って――長谷川優貴女流二段

少し前を振り返って――長谷川優貴女流二段

ライター: 長谷川優貴  更新: 2021年01月28日

 寒さが厳しくなってきたと感じる今日この頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 新型コロナウイルスの影響で、常日頃とは違う日々が続き不安に感じられている方も多いと思います。
 私も16歳で女流棋士になってから10年目になりますが、こんなにもイベントがなく皆様ともほとんどお会いできない状況になるのは初めてのことなので、とても寂しく思っております。
 普段なら何も思わないで過ごしてきた日常が(日常とはそういうものでしょうが)、実は全く当たり前ではなかったことに改めて気が付きながらも、新型コロナウイルスの話題が出始めてもうそろそろ1年近く、まだ現実感のない状況が続いております。
早くイベントに参加したい、対面で研究会やVS等をして思う存分感想戦をしたい、大勢での飲み会もしたい、とりあえずマスクを取りたい...今したいことは少し思い描くだけで山のように出てきます。
しかし今個人にできること、できないことを考え行動するのが今の私にできる唯一のこと。
少しでも早く、将棋を通して皆様と交流できるのを楽しみに毎日を乗り越えていこうと思います。

 将棋と囲碁、一緒に語られることがとても多いと思うのですが、緊急事態宣言中の対応は全く違いました。
将棋は名人戦、叡王戦、女流王位戦の開幕と東西の移動を要する対局は延期となりましたが、それ以外は感染対策をしながら続行されました。
対して囲碁の手合いは(同じ盤を挟むことでも呼び方が違うのを私も少し前に知りました、タイトル戦も挑戦手合いと呼ぶそうです)、一切されることはありませんでした。
どちらが良いとか悪いとかではなく、似ている業界でもこんなにも違うのだなと驚きました。
そんな状況の中、将棋ファンでよかった!と嬉しかったのはABEMA放送などの中継を長時間見られたこと。
今までは何かと忙しく朝から晩まで家にいることがほとんどなかったので、対局の勝負所や解説の先生のお話の面白そうだなと思うところなどで泣く泣く離脱させられることも多々ありました。
しかし、春の私は暇です(笑)
過去放送なども含め、今まで観られなかったところも数多く観戦できとても充実したひと時でした。
そしてなんと言っても忘れてはいけないのはAbemaTVトーナメント!
曜日の感覚が薄れていく中、ほぼ毎週土曜日だけはしっかりとその日にすることを終わらせ、テレビ前待機をしていたことが今となっては少し懐かしく思い出されます(笑)
将棋界ではあまりない団体戦、また第4回が行われるのを心待ちにしております。

 今回コラムを書くにあたって、色々と少し前のことを思い出しておりました。
しかしはっきり言って印象に強く残っている思い出などほとんどありませんでした。
毎日同じことの繰り返し、マスクを着けて買い物に行って3日間分の食べ物を買い、そしてしばらく引きこもってまた3日後には買い物に行き・・・そんな日常の中で対局や記録などで連盟に行って偶々会う、棋士、女流棋士、奨励会員、職員の方と少しでも直接お話しできるのは私の唯一の楽しみでした。

 そして今改めて思うことは最初にも述べましたが、将棋ファンの方に会いたい。
画面越しに呼びかけるのではなく、一人一人の方と向き合ってお話ししたい。
感想戦もzoom等を通すのではなく、お互いの声が被さるくらい質問し合いたい。
オンラインももちろん便利でいいのですが、やっぱり違います。
そんな何気ない日常が戻ってくるまで、私も頑張ります。
またその日まで、皆様お元気で。

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写真は箕面大滝で

私のシリーズ

長谷川優貴

ライター長谷川優貴

兵庫県明石市出身。1995年9月13日生まれ。第5期マイナビ女子オープンでアマチュア選手として出場し、予選を勝ち抜き、自身2度目の本戦出場を果たした。その年の10月に女流棋士2級となり、とんとん拍子で本戦を勝ち続け、挑戦権を獲得。上田初美女王(当時)と五番勝負を戦った。

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