挑戦者争いが佳境に。11月上旬の注目対局を格言で振り返る

挑戦者争いが佳境に。11月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2020年12月16日

竜王戦は豊島将之竜王が2勝目をあげてリード。棋王戦や王将戦も進行し、挑戦者争いが佳境になっています。

第33期竜王戦七番勝負第3局

【第1図は▲6四馬まで】

 第1図は第33期竜王戦七番勝負第3局(▲羽生善治九段△豊島将之竜王)。激戦の終盤戦で、▲6四馬は▲4二銀以下の詰めろです。ここで△4二歩が「敵の打ちたいところへ打て」で、スペースを埋めて自玉の詰みを消しています。実戦は▲5三銀と迫ったため△同歩▲同歩成に△8七銀と打って先手玉が詰み筋に入り、後手の勝ちとなりました。これで2勝1敗となり豊島竜王がリード。
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写真:日本将棋連盟

第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第2局

【第2図は▲7一成銀まで】

 第2図は第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第2局(▲西山朋佳女流王座△里見香奈女流四冠)。石田流対居飛車急戦の戦いです。図は手番を握り、駒の働きでもまさる後手が優勢です。一発△6七歩成が「金は斜めに誘え」の手筋で、▲同金なら△7九飛がより厳しくなります。実戦は▲5九金引と辛抱しましたが無条件にと金が作れたのは大きく、△6六角が好点の角打ちになりました。挑戦者が快勝で五番勝負は1勝1敗に。
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写真:常盤秀樹

第28期倉敷藤花戦三番勝負第1局

【第3図は△7五同飛まで】

 第3図は第28期倉敷藤花戦三番勝負第1局(▲里見香奈倉敷藤花△中井広恵女流六段)。中盤戦で後手が7筋の歩を交換してきたところです。ここから▲6六角△7二飛▲7八飛が「戦いの起こった筋に飛車を振れ」の振り飛車らしいさばき。7筋交換を逆用して決戦に持ち込もうとしています。形勢は難解ですが、終盤に受けの好手を連発した先手が制勝しています。
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写真:日本将棋連盟

第46期棋王戦挑戦者決定トーナメント

【第4図は△6四香まで】

 第4図は第46期棋王戦挑戦者決定トーナメント(▲糸谷哲郎八段△久保利明九段)。先手が居玉のまま棒銀の速攻に出て優位に立ちました。図の△6四香は歩切れを突いた攻めですが先手玉はまだ大丈夫です。▲8二金が「玉は包むように寄せよ」の手筋で、△同銀と取らせておけば▲4一成桂が詰めろになります。以下△7二玉の早逃げにも▲5二歩成が厳しく、先手の一手勝ちコースです。

第46期棋王戦挑戦者決定トーナメント

【第5図は△5四歩まで】

 第5図は第46期棋王戦挑戦者決定トーナメント(▲広瀬章人八段△永瀬拓矢王座)。角換わりから2枚換えで先手ペースです。▲1七角が「遠見の角に好手あり」で、6二の金にも狙いを付けています。実戦は△2五桂で催促しましたが、▲4四桂が厳しい攻め。以下も入玉含みの長い終盤戦が続きましたが、先手が押し切っています。勝者組決勝は糸谷八段と広瀬八段の顔合わせになりました。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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