藤井が永世竜王に 11月上旬の注目対局を格言で振り返る

藤井が永世竜王に 11月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2025年11月28日

 2年連続の対戦となった竜王戦七番勝負は藤井聡太竜王が4連勝で防衛。5連覇で永世竜王の資格を得るとともに、通算32期目のタイトルで獲得数も歴代単独4位となりました。

第38期竜王戦七番勝負第4局

【第1図は▲8七同金まで】

 第1図は第38期竜王戦七番勝負第4局(▲佐々木勇気八段△藤井聡太竜王)。桂を2枚持っているため、△8三桂が「桂は控えて打て」の手筋ですが、次に△7五桂打と打っても取ってもらえず、飛車先が重くなる可能性があります。先に△7五桂と捨てるのが鋭い一手。▲同歩と取らせてから△8三桂▲8五歩△7五桂で、狙いが実現しました。これでも厳密には後手が少し苦しいようですが、先手玉も危険な形になって勝負形です。以下は訪れたチャンスをとらえて、後手が難解な終盤を制しました。

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写真:琵琶

第38期竜王戦七番勝負第3局

【第2図は▲5三同桂成まで】

 第2図は竜王戦第3局(▲藤井竜王△佐々木八段)。佐々木八段が意表の四間飛車を採用した第3局。先手が攻め、後手が受ける展開になっています。いま角を渡したところですが、「四枚の攻めは切れない」の通り形勢は先手良しです。持駒の飛車金に加えて5三の成桂、そして6筋に歩が利くことと、展開によっては4六の銀も攻めに参加できます。実戦も的確に攻めをつないだ先手が押し切りました。

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写真:武蔵

リコー杯第15期女流王座戦五番勝負第2局

【第3図は▲5七角まで】

 第3図はリコー杯第15期女流王座戦五番勝負第2局(▲西山朋佳女流二冠△福間香奈女流王座)。大駒の働きに差があり、後手優勢の終盤戦です。△5八歩が「と金の遅早」の確実な攻め。△5九歩成~△5八とが回れば金をはがせてはっきり勝勢になります。以下先手も必死の粘りを見せましたが、後手が的確に押し切っています。

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写真:八雲

大山名人杯第33期倉敷藤花戦三番勝負第1局

【第4図は△3九飛成まで】

 第4図は大山名人杯第33期倉敷藤花戦三番勝負第1局(▲福間香奈倉敷藤花△伊藤沙恵女流四段)。後手の猛攻が続いていましたが、先手に反撃のターンが訪れました。▲9四桂△同香に▲9三銀が鋭い寄せ。「終盤は駒の損得より速度」で、銀を一枚捨てて速度をあげます。以下△9三同玉▲9四歩△8二玉▲9三歩成△7三玉▲8二銀△6二玉▲5四桂△同金▲同馬で、駒を渡しましたが先手玉は中央が厚く詰みません。

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写真:銀杏

大山名人杯第33期倉敷藤花戦三番勝負第2局

【第5図は△4一香まで】

 第5図は倉敷藤花戦第2局(▲伊藤女流四段△福間倉敷藤花)。後手が下段の香を置いて、力を溜めたところです。ここから▲6四銀成△4六歩▲5三歩成△5五歩▲4五歩と進行。先手は大きな駒損になりますが、「5三のと金に負けなし」の通り、中央のと金が大きな存在感を放っています。この後も後手の猛攻が続きましたが、後手は駒を渡しにくい状況が続いたのが痛く、先手が制しています。

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写真:翔

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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