ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年12月08日
竜王戦は挑戦者が第2局を返し、あらためての五番勝負に。女流王将戦は挑戦者があと一歩まで追い詰めましたが、土壇場の大逆転で初防衛となっています。
【第1図は▲7六飛まで】
第1図は第33期竜王戦七番勝負第2局(▲豊島将之竜王△羽生善治九段)。角換わり早繰り銀からじっくりした戦いとなり迎えた終盤戦で、後手優勢となっています。△8九銀が「玉は下段に落とせ」の寄せで、▲同玉なら△8七銀が詰めろ飛車取りです。また▲6九玉にも△8七角があるので広い方へも逃げられません。実戦は▲8八玉としましたが△7五歩▲同飛△8六飛▲9七玉△8五歩▲同桂△7四桂から後手が寄せきっています。
撮影:日本将棋連盟
【第2図は▲7五桂まで】
第2図は第42期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第3局(▲西山朋佳女流王将△室谷由紀女流三段)。相振り飛車から手厚い形を作り上げて後手優勢です。△7四銀が「桂頭の銀定跡なり」の手堅い受けで▲8三歩△同銀▲9四歩△同歩▲8三桂成△同玉で上部の厚い後手が優勢です。以下後手がはっきり勝勢に近付きましたが、最終盤でミスがあり、大逆転で先手の勝ちに終わっています。
【第3図は▲8八同金まで】
第3図は第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第1局(▲里見香奈女流四冠△西山朋佳女流王座)。相中飛車の出だしから先手が居飛車に戻す珍しい展開になりました。後手が決戦を挑み角交換になったところです。ここから△3五歩▲同歩△6六歩▲同歩△5五歩が「開戦は歩の突き捨てから」で、3筋と6筋を突いたことにより、攻め筋の幅が広がっています。仕掛けでペースを握り、先勝しています。
撮影:常盤秀樹
【第4図は▲5三歩成まで】
第4図は第51期新人王戦決勝三番勝負第2局(▲池永天志四段△齊藤優希三段)。矢倉の出だしから後手が急戦を仕掛け居玉のまま戦いになりました。「5三のと金に負けなし」とは言いますが、それが居玉相手ならばより際立っています。実戦は△4六飛▲同歩△2六角でと金を抜きにいきましたが、▲3七銀△5三角▲6六歩で先手ペースの戦いです。終盤は激戦になりましたが池永四段が競り勝ち、新人王に就いています。
撮影:日本将棋連盟
【第5図は△6二同玉まで】
第5図は第41回将棋日本シリーズ準決勝(▲豊島将之竜王△渡辺明JT杯覇者)。相掛かりから後手がひねり飛車の戦いになりました。後手が押している将棋でしたが図の少し前に逆転しています。先手陣は広く余裕があるので▲4二金△5八香▲8四桂と「寄せは俗手で」の攻めで十分です。以下△5九香成に▲5一角△7一玉▲6二銀△8一玉▲7二桂成△同玉▲7三銀成で寄り筋。2連覇中の渡辺JT杯覇者を破り、豊島竜王が永瀬拓矢王座の待つ決勝戦へと進出しました。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段