【前編】オンライン将棋スクール ~飯塚一門特別座談会~

【前編】オンライン将棋スクール ~飯塚一門特別座談会~

ライター: 日本将棋連盟オンライン将棋スクール  更新: 2025年11月26日

令和7年9月、第77期奨励会三段リーグ最終戦で4名の新四段が誕生。飯塚祐紀八段門下からは岩村凛太朗四段と片山史龍四段が同時昇段を果たしました。
オンライン将棋スクール講師としても活躍する飯塚八段と、新四段のお二人による座談会を、本記事では前編・後編に分けてお届けします。
日本将棋連盟公式YouTubeチャンネルにて動画を公開中です。動画では時間の都合でカットされた未公開エピソードを本記事に掲載しています。ぜひ動画と合わせてお楽しみください。
視聴はこちらから

―皆さん、こんにちは。今回は将棋を通して子どもの才能をどう見つけ、どう伸ばしていくのかというテーマのもとに、飯塚祐紀八段と、令和7年10月に棋士になったばかりの2人のお弟子さんにお話を伺います。

―岩村四段、片山四段 まずは四段昇段のお気持ちはいかがですか?
岩村:皆さんも将棋で勝ったら嬉しいと思いますが、それと全く同じです。昇段したことが嬉しいというよりは、昇段の一番で勝ったことが嬉しいという感じです。
片山:私は奨励会生活が長かったと思っているので、嬉しいというよりも、ほっとした気持ちです。
飯塚:何年ぐらいでしたっけ?
片山:10年ですね。
飯塚:岩村くんは何年ですか?
岩村:8年ぐらいです。
飯塚:スタートラインに立ったということで、これからですね。
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昇段会見での1コマ 左から片山四段、岩村四段、生垣寛人四段、山下数毅四段
(いずれも当時三段)

―師匠との最初の出会いは?
岩村:僕も片山先生も師匠が主宰されている江古田将棋教室※に通い始めたのが、出会いでした。僕は6歳の頃で
片山:私は小学2年生の時です。
飯塚:初めて教室に来た時を覚えています。片山くんは藤田 麻衣子先生のお教室で習っていました。藤田先生からは24時間将棋を考えている子という紹介があり、ちょっとびっくりしました。確かにすごく熱心でした。岩村くんも覚えています。いきなり詰将棋をたくさん解き始めてびっくりしました。こんなに詰将棋を解ける幼稚園生がいるのかと、腰を抜かしそうになったことを今でも覚えています。
岩村:教室の最後にする詰将棋プリントが楽しみでした。
飯塚:詰将棋の印象がすごく強いですね。

―師匠の第一印象は?
片山:通いだした時は人見知りをしていましたが、優しく指導対局してもらえて、すぐに教室の雰囲気慣れて、馴染めました。
岩村:初めてお会いした時の記憶はもう残っていないですが、指導対局ではとにかく勝たせてくださった記憶があります。
飯塚:教室自体は和やかに開催していました。そこまで厳格にやっていません。近所の子たちを集めて明るく楽しくやっているような教室でした。2人とも真面目でいい子でした。
※江古田将棋教室は飯塚八段が東京都練馬区の江古田駅近くで主宰している将棋教室。

―なぜ飯塚先生の門を叩こうと思ったのですか?
片山:自然と教室に通っていたので、師匠をどなたに頼もうかなとなった時には、飯塚八段にお願いしました。
岩村:僕も全く同じで、一番関わりのある棋士の先生が、飯塚師匠でした。
飯塚:奨励会試験を受けるとき、師匠探しは結構大変なんです。僕は教室をやっていましたし、2人は教室の卒業生ですから、そういう流れでお受けさせていただきました。また2人とも熱心で人柄もしっかりしているので大丈夫だと思いました。奨励会は将棋の強さはもちろん、プロの修行ということで大変なところもあります。修行を乗り越えていける強さがあると思ったことも一つ材料です。
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片山四段(当時三段)

―将棋を始めたキッカケは?
片山:6歳の時に父からルールを教わったのがきっかけです。
岩村:僕は4歳の頃、祖父の家でたまたま将棋盤を見つけたのがきっかけでした。

―どんなお子さんでしたか?
片山:大人しい性格で将棋の他にサッカーを習っていた時期もあったんですが、将棋のほうが楽しくなって、サッカーを辞めました。どちらかといえば家にいるほうが好きな子供でした。
岩村:僕は鬼ごっこをやっているか将棋をやっているかでした。どちらかというと活発だった気がします。
飯塚:将棋に惹きつけられたということに興味があるんですけど、どういうところに惹きつけられましたか?
岩村:僕は頭を使うことが好きでした。
飯塚:考えることだね。片山くんはサッカーも習っていたけど、将棋を選んだのはどうして?
片山:将棋は個人戦なので勝った時に自分の力で勝てることがうれしかったのかもしれないです。
飯塚:確かに個人戦だと絶対に試合に出られるからね。サッカーだと人数の関係であったり、雨が降ったら試合がなくなることはあるけど、将棋は雨でも関係なくできますね。
岩村:確かに理不尽なことが起こらないです。
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清水市代会長から岩村四段への四段免状授与の様子

―子供の頃どんな勉強をしていましたか。
岩村:詰将棋を解きまくっていました。それがメインでした。
飯塚:私は子供教室で「詰将棋やるように」ってみなさんによく言いますが、岩村君はいっぱい解いていたので、言ったことがないです。詰将棋の本を貸していましたが、そのうち貸す本のほうがなくなってきたような気がします。
岩村:目につく詰将棋は全部解いていました。例えば5手詰めが200問載っている本とかだったら、一日で全部解き切っていました。
片山:奨励会に入るまでは、ほとんど実戦でした。将棋道場に通ったり、参加できる将棋大会にはほとんど参加したり、指すことで強くなっていった感じです。
岩村:確かに将棋道場はそうですね。僕も将棋連盟の会館道場や荻窪の道場に通っていました。
飯塚:将棋道場では一日に何局ぐらい指していた?
片山:級位者の頃はペースが速いので、一日10局、20局と指していました。
飯塚:20局はすごいね。朝から夕方までずっと指している感じですか。大会とかはどうでした?楽しかったですか?
片山:大会に出ると、新しい友達と出会えました。
飯塚:人の輪が広がるところがありますね。
岩村:大会は負けると楽しくないので、勝つために勉強することが、将棋の勉強のモチベーションになっていました。あと団体戦がすごく好きでした。片山先生と一緒に「チーム納豆巻き」という名前で3人の団体戦に出たこともありました。 飯塚:団体戦には独特の楽しさがありますよね。

―奨励会時代一番つらかった思い出は?
岩村:奨励会の対局中に救急車で運ばれたことです。僕は中学二年生の頃からストレス性のお腹の病気になりました。例会の前日に薬を変えたのが大悪手で、それが原因で救急車に運ばれたことがありました。その時期はすごく辛かったです。今も乗り越えたとはあまり言えなくて、共存しながら、という感じです。
飯塚:その時は二段から三段に昇段しそうな時でしたよね。昇段の目があることをプレッシャーに感じていたのかな? 岩村:プレッシャーというよりは学校との両立で眠る時間がなかったことが原因だったかもしれません。
飯塚:確かに奨励会はある意味学校みたいで、2つの学校に通っているようなところがあるから、時間のやりくりが大変ですよね。対戦相手は、友達でライバルでもある吉池隆真現四段でしたよね。対局は不戦敗となり、勝敗は決まっていたけど、将棋の内容に興味があるということで、後日オンラインで続きを指していました。それが奨励会らしくてすごくいいなと思いました。
片山:三段リーグでここ1、 2年、昇段に絡めなかった時期が一番つらかったですね。三段になってから長い時間が経って、20歳を越えたことでだんだん焦りが生まれてきました。
岩村:確かに途中から昇段の目がなくなっちゃうと、奨励会の例会に行くこと自体が虚しい気持ちになっちゃいますよね。
飯塚:片山くんの場合は、三段に上がってから早い時期に四段昇段の目がありましたね。※
すごく惜しかったですよね。そのあと本人は辛かったのかもしれないけど、僕が見ている感じでは淡々としていました。焦りを見せないところがプロ向きだと感じます。何事もなかったようにしているのはすごくいいなと思いました。
※片山四段は2022年3月、第70回奨励会三段リーグ戦において次点。2025年9月に第77回奨励会三段リーグ戦で2回目の次点。次点2回でフリ―クラス入りの権利を獲得し、2025年10月1日に四段昇段となった。

―2人が伸びると感じた時は?
飯塚:岩村くんは詰将棋ですね。詰将棋解答選手権というすごく難しい問題が出題される早解き選手権があります。岩村くんは7、8歳のころに初めて出場していましたね。
答案に名前を書く練習をしていると言っていて、もちろん詰将棋もしているとは思いますけど、名前を書く練習をしている年齢の子が出場することがすごいなと思いました。
片山くんもたくさんあります。いつも将棋に熱心でした。2級で教室にはいって、すぐに五段になっていて、伸びるというか伸びていると思いました。片山くんは常に前向きに将棋を指していました。

―師匠からもらったアドバイスで今でも忘れられない言葉はありますか?
片山:三段時代にかけてもらった言葉です。昇段になかなか絡めていない時に「実力はあるので焦らないで」という言葉を何回もかけてもらいました。
岩村:メールでのやり取りもありましたか?(片山四段がうなずく。)
岩村:そうですよね。飯塚一門は、奨励会の棋譜を師匠に送るっていう文化があって、師匠が毎回フィードバックをくださるんです。もうその言葉たちはどれも忘れられないです。
飯塚:言った方はあまり覚えてないんですけど、そう感じてもらえて良かったです。1000のことを言ったうちの3つくらい役に立てばいいなという気持ちで言っています。

―師匠からみて2人の「ここがすごい!」「実はこんな一面が...」というところはありますか?
飯塚:岩村くんは再三にわたり話題に上がっていますけれど、詰将棋ですね。解くのが早すぎて魔法のようです。作るほうもすごくて、なんでこういった発想になるんだろうと思います。※
※岩村四段は2025年の詰将棋解答選手権において、優勝の藤井聡太竜王・名人に次いで2位だった。詰将棋の創作において最高名誉となる看寿賞を令和4年に43手詰で2作、令和5年に43手詰で1作を受賞している。
岩村:ありがとうございます。
飯塚:感心しています。私は岩村詰将棋のただのファンです。
片山くんは人と交わらないでソフトで研究していて、ずっと一人で取り組むことに意志の強さに感心します。また将棋の内容をいつも工夫していていますね。2人に共通していますが、自分の考えや、自分が描きたい将棋をしっかり掴んでいることを感心しています。

―師匠の「ここがすごい!」「実はこんな一面が...」というところはありますか?
片山:教室で何百人の生徒に教えていたり
飯塚:累計ですね。20年経つから。
片山:あと奨励会員も今一番多いほどたくさん在籍している中で、一人一人に将棋を教えたり、メールをしてくださるところがすごくありがたいなと思っています。
飯塚:ありがとうございます。私も甲斐がありますね。
岩村:指導対局で毎回熱戦にしてくださる。本来はすごい実力差があるんですけど、最後毎回勝たせてくださります。生徒を楽しい気持ちにさせてくれるというのがすごいなと思います。
飯塚:教室の時代ですよね。2人には最後の方は、平手で普通に負けていたような気がする。(笑)(岩村四段、片山四段ともに首を横に振る)強くなっていましたよね。

―師匠とはどういう存在ですか?
片山:将棋界での親という感じです。
岩村:実際に我々の親と年齢も近いです。
飯塚:師匠と弟子の関係は結構難しいですよね。奨励会はみなさん将棋が強いけど、僕の場合は小中学生だったりするので身元保証人というか面倒を見るような気持ちです。研究会を開いたり、奨励会幹事の先生からの伝言があったり、そういう感じです。僕も師匠に面倒を見てもらったので、弟子に返すような気持ちで接しています。技術的な指導より、プロは人前に出るので人間性を気にしています。2人はしっかりしているので、私からいうことは特にないです。

―一番盛り上がった研究会や、食事の思い出は?
飯塚:最近も行ったりしているけど、教室のころをよく覚えています。年末の忘年会で大人は食事をしているときも小学生はずっと将棋を指していましたね。あとは合宿に行きましたね。都内に一泊二日で研究会することがありました。昼も将棋をしているけど、夜も寝るまで将棋を指していたというのを聞きました。
片山:みんなでリレー将棋などを指していました。
飯塚:一緒に泊まっている親御さんに聞いたら夜遅くまで将棋を指していたと聞きました。多分スイッチ切れるまでずっと将棋を指していたんですね。すごく楽しかったと聞きましたけど。
岩村:そうですね。本当に将棋を指すのが好きでした。

―プロ棋士としての今後の目標を教えてください!
岩村:将棋の新しい可能性みたいなのを広げられるような、将棋を指したいなと思います。
片山:私の場合は、まずはフリークラスを突破することです。いずれはA級棋士になれるような実力をつけたいと思っています。

―指導者として、今後スクールの生徒たちをどのように育てていきたいですか。
飯塚:生徒は日本中から集まっています。スクールをきっかけに将棋に親しんでもらいたいです。明るく楽しくやってもらいたいというのが一つあります。あと棋力を伸ばすという点では、皆さんできていると思います。将棋は知識が増えていけば、それだけでも強くなります。美濃囲いを覚えるとか、棒銀戦法を覚えるとか、知識が増えれば絶対強くなります。将棋に慣れ親しむということから始まって、徐々に棋力向上につなげていってもらえればなと思います。棋力向上ができれば、またそれが次の楽しみになりますからね。将棋でいろんな面に気がついてもらえたら嬉しいですね。

―はい、ありがとうございました。
次回、オンライン将棋スクールの生徒から届いた質問にお答えします。将棋の実戦的な悩みから好きなものに関して等、様々な質問にお答えします。

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水曜日クラス:毎週水曜 17:30〜19:00
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講師陣として、飯塚八段、藤倉勇樹六段、村田顕弘六段、星野良生五段が指導を担当。
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【受講期間】
2026年1月~3月末

【対象学年】
小学校1年生~中学校3年生

【対象棋力】
水曜日クラス:1~5級程度
金曜日クラス:3~7級程度

【お申込み方法】
[お申込みフォーム]
https://forms.gle/rWWa2Qyszzi4mCp66
[申し込み期間]
令和7年11月25日(火)~12月15日(月)

[月謝]
・8,800円(税込)/月
開講前に3ヶ月分26,400円(税込)を一括支払いとなります。
お支払い方法につきましては、12月下旬頃にメールにてお知らせします。

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・ビデオ通話を行うことが出来るPC
...カメラ・マイク・スピーカーの接続が必要となります。
※「iPad」などのタブレット端末では通話や対局の際に不具合が発生するケースがございます。受講される際はPCのご用意をお願いいたします。

【お申込み方法】
日本将棋連盟 オンライン将棋スクールHPより
[申し込みフォーム]
https://forms.gle/Lizy9Kdpt5Bph3qH7
[申し込み期間]
令和7年11月25日(火)~1月7日(水)

日本将棋連盟オンライン将棋スクール

ライター日本将棋連盟オンライン将棋スクール

日本将棋連盟では、どこに住んでいても将棋が上達できることを目的とし、「オンライン将棋スクール」を開講しています。このコラムでは、将棋の勉強方法や楽しみ方に加え、さまざまな視点から将棋の魅力と学ぶ意義をお届けします。

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