ライター一瀬浩司
攻めの幅が広がる5七銀型カニ囲い右四間飛車の組み方【玉の囲い方 第90回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年09月13日
前回のコラムでは、相居飛車における右銀を5七(5三)に上がる「カニ囲い右四間飛車」に組む手順を見ていきました。今回はカニ囲い右四間飛車に組む際の注意点を見ていきましょう。それでは、5七銀型カニ囲い右四間飛車に組むまでの手順をまずは復習していきましょう。初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八銀、▲7八金、▲6九玉、▲3六歩、▲5八金、▲5七銀右、▲4六歩、▲4八飛、▲3七桂(第1図)。
【第1図は▲3七桂まで】
腰掛け銀型の右四間飛車と注意点は一緒
それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点:基本的には、腰掛け銀型の右四間飛車と注意点は変わりません。第2図をご覧ください。
【第2図は△8五歩まで】
いま後手が△8五歩と伸ばしてきたところです。ここで、▲7七銀と上がるのは角筋が止まってしまい、攻撃力が大幅に落ちてしまいます。また、▲7七角と上がるのは、△8六歩▲同歩△同角とされ、▲同角は△同飛で角交換になり、盤上から角が消えてやはり攻撃力が落ちてしまいます。また、前回ご紹介した実戦のように、▲6六角は△6八角成▲同金右△8九飛成▲7九金△8五竜(第3図)で今度は拠点などができていないので、反撃手段がありません。
【第3図は△8五竜まで】
△6八角成のところでは、△6四角とされても▲8四歩は△7四歩で、△7三銀~△8四銀や、△7五歩▲同歩△8四飛などで、打った歩をすぐに払われてしまいます。△6四角に▲8七歩と受けるのは、結局8筋が切られてしまい、▲7七角と上がった意味がまったくなくなりますよね。また、6四の好位置に角がいるため、▲4五歩は△1九角成と香を取られてしまうため、なかなか仕掛けるのが難しくなってしまいます。
第2図では、8筋に構わず▲3七桂と跳ねるところでした。それでは、次に囲いの発展形を見ていきましょう。
雁木に組み替える発展形も‥
囲いの発展形:第1図から、▲6六歩~▲6七銀(第4図)として雁木に組み替える順もあります。【第4図は▲6七銀まで】
二枚の銀が上部に厚く、美しい形ですね。また、5七銀型ならではの指し方もあります。▲5五歩△同歩▲同角と5筋を交換し、▲8八角~▲5六銀(第5図)と銀を5六に持っていきます。
【第5図は▲5六銀まで】
腰掛け銀に比べると、5六に到達するまで、かなり手数が掛かっていますが、5筋の歩を手持ちにしていることが大きいのです。▲5五歩の合わせや、▲5三歩の垂らしなど、攻めの幅が広がっていますね。また、▲5九歩と打った形がすこぶる堅くなるので、飛車を切っての攻めも躊躇なくできるようにもなります。
以上、二種類の右四間飛車カニ囲いをご紹介しましたが、5六銀型は破壊力がより強く、5七銀型は歩の下から銀が出ていくので、厚みのある攻めができ、それぞれに長所があります。両方試してみて、ご自身により合っている型を使っていただけたら、と思います。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。