第46期新人王戦、斎藤VS千田に見る左美濃急戦に組む際の注意点【玉の囲い方 第84回】

第46期新人王戦、斎藤VS千田に見る左美濃急戦に組む際の注意点【玉の囲い方 第84回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年07月31日

玉の囲い方

前回のコラムでは、相居飛車における「左美濃」に組む手順を見ていきました。今回は左美濃急戦に組む際の注意点を見ていきましょう。それでは、左美濃急戦に組むまでの手順をまずは復習していきましょう。初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲2五歩、▲4六歩、▲7八銀、▲6八玉、▲7九玉、▲5八金右、▲4七銀(第1図)。

【第1図は▲4七銀まで】

2五歩を早めに突く理由は?

それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。

組む際の注意点:前回、囲いを組むまでの手順で、▲2五歩を早めに突きましたね。まずはその理由からです。第2図は平成27年6月9日、第46期新人王戦、▲斎藤慎太郎六段ー△千田翔太五段戦(肩書は当時)です。

【第2図は△8五歩まで】

後手の千田七段は左美濃に組み、右桂を跳ねて攻撃態勢を整えてから8筋を伸ばしました。ここで、▲7七銀なら普通ですが、斎藤王座は▲7七角と上がりました。これが飛車先を決めるのを遅らせた手をとがめた対応で、以下、一例として△6五歩と仕掛けても、▲同歩△同桂(大悪手ですが、わかりやすくするために)のとき、角が向かい合っているので、▲2二角成△同玉▲5五角(第3図)の王手飛車がありますね。

【第3図は▲5五角まで】

一応、第3図からは△3三角▲8二角成△6六歩という切り返しはありますが、▲7七金寄△同桂成▲同桂、または▲5五歩△6七歩成▲同金のいずれでも、駒得の先手が優勢になります。また、この変化が嫌ならば、第3図の▲5五角に代えて▲6六歩と打って桂を殺しておいても後手に後続の攻めがなく、これもはっきり先手よしとなります。

実戦は▲7七角に対して、千田七段は仕掛けずに△4四歩と止め、斎藤王座が▲3七銀から棒銀に出ました。もちろん、まだ序盤なのではっきりとした差はついていないはずですが、角筋を止めてしまっては作戦失敗の感は大きいですね。結果も、斎藤王座がうまく指し回して制しました。ですので、左美濃急戦を目指す場合は、第4図のように早めに▲2五歩(△8五歩)を突いてしまいます。

飛車先を突かれても、交換は甘受しなければいけない

【第4図は▲2五歩まで】

第4図以下、△3三銀なら▲4六歩から左美濃急戦、△3三角なら別の作戦に切り替えていきます。

また、飛車先を突かれたとき、▲7七角(△3三角)とは受けないほうがよいです。第5図は、第4図から十四手進めた局面です。

【第5図は▲5八金右まで】

ここから、△8六歩▲同歩△同角とされると、▲同角△同飛は角交換になってしまい、角筋がなくなるので攻めに迫力もなくなってしまいます。また、▲6六角とかわすのも後手に右銀を繰り出されたときなどに当たりが強くなってしまいますし、▲8八角と引くのも▲7七角~▲8八角の二手がまったくの無駄手になってしまいますね。ですので、飛車先は突かれても、交換は甘受しなければなりません。交換された、ではなく、△8四歩、△8五歩、△8六歩と三手も使ってくれたからその分攻撃態勢が十分に築ける、と思えばよいでしょう。

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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