近年優秀な矢倉対策として認められた、相居飛車左美濃急戦の組み方(1)【玉の囲い方 第83回】

近年優秀な矢倉対策として認められた、相居飛車左美濃急戦の組み方(1)【玉の囲い方 第83回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年07月26日

今回のコラムでは、「左美濃」をご紹介します。ミレニアム同様、あれ? 左美濃も前やったじゃないの。と、思われるでしょうが、以前は対振り飛車に対しての囲いでした。今回は相居飛車戦での左美濃について見ていきます。

近年、さまざまな矢倉対策が出てきましたが、左美濃急戦が優秀であるということがわかってきました。では、どのようなものか、見ていきましょう。

相居飛車における左美濃急戦の特徴

囲いの特徴:第1図をご覧ください。

【第1図は△6五歩まで】

平成27年10月27日、第1期叡王戦本戦、▲森内俊之九段ー△阿部光瑠五段戦(肩書は当時)です。後手の陣形は飛車先は切られていますが、コンパクトにまとまっております。対して先手陣は矢倉ですが、囲いの完成までまだまだかかる、という状況で仕掛けられています。

第1図から、▲6五同歩△7五歩▲6六銀△8六歩▲同歩△7六歩▲5五歩△7四銀▲5七銀上△8五歩▲同歩△6五銀(第2図)と、阿部六段が猛攻を仕掛けていきました。

【第2図は△6五銀まで】

第2図以降も、阿部六段はガンガン攻め続け、「鉄板流」とも言われる受けの名手、森内九段を攻め倒しました。相居飛車での左美濃は以前からありましたが、この将棋あたりから、爆発的に増えました。

以前は右四間飛車(次のコラム予定です)や棒銀と組み合わせたり、金を6七(4三)に上がって持久戦になったりする将棋が指されていましたが、銀を4七(6三)に上がって角筋を生かしてガンガン攻めて行くのが破壊力があり、優秀な矢倉対策として認められました。近年、矢倉が激変した一因でもあります。

矢倉側もいろいろと工夫をしていきますが、左美濃側もその対策を上回る攻め筋を見せていきます。第3図は平成30年11月12日、第60期王位戦予選、▲佐藤康光九段ー△上村亘四段戦です。

【第3図は▲2五飛まで】

佐藤九段は2筋を角で交換し、4六に引いて手順に6四の歩に利かしました。対して上村四段は5四に銀を上がるために6二に飛車を回り、▲2五飛と浮いたところです。次の狙いはもちろん▲8五飛。形を崩さずに受けるのなら、△8二飛ですが、これだと一手前の△6二飛が無駄手になってしまいます。

そこで、上村四段はものすごい悪形に見えますが、△7四銀! と歩越銀で受け、▲5七銀に△8六歩▲同歩△3三桂! ▲2八飛△4五桂▲6八銀右△6五歩と守りの桂まで跳ね出して猛攻をかけていきました。今後、矢倉側にさらなる工夫が出て、逆に左美濃が下火になることがあるのか、にも注目していきたいですね。

相居飛車における左美濃急戦に組むまでの手順

それでは、これまで通り先手側の駒だけ配置して、相居飛車における左美濃急戦に組むまでの手順を見ていきましょう。 囲いに組むまでの手順:初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲2五歩、▲4六歩、▲7八銀(第4図)。

【第4図は▲7八銀まで】

早々と▲2五歩と突いてしまっていますが、その理由は次回書きます。また、矢倉では銀は6八に上がりますが、左美濃なので7八に上がります。第4図から、▲6八玉、▲7九玉、▲5八金右、▲4七銀(第5図)。

【第5図は▲4七銀まで】

とりあえず、第5図を完成形としておきます。次回は、居飛車左美濃急戦に組む際の注意点を見ていきましょう。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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