ライター一瀬浩司
いろんな形に発展させられる!対振り飛車金美濃の組み方(2)【玉の囲い方 第82回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年07月24日
前回のコラムでは、対振り飛車における「金美濃」(仮称)に組む手順を見ていきました。今回は金美濃に組む際の注意点を見ていきましょう。それでは、金美濃に組むまでの手順をまずは復習していきましょう。初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲5七銀、▲7七角、▲6六歩、▲6七金、▲8八玉、▲7八金(第1図)。
【第1図は▲5七銀まで】
角筋を生かした攻めに注意
それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点:第2図をご覧ください。
【第2図は▲2五桂まで】
平成31年1月25日、第67期王座戦2次予選、▲藤井猛九段ー△木村一基九段戦です。前回のコラムで、藤井システムが登場してから増えた囲いと書きましたが、藤井システムは角筋を生かしてガンガン攻めていく戦法ですので、第2図のように、玉が2二(8八)と角筋に入った瞬間に仕掛けられる順も警戒しなくてはなりません。もちろん、第2図で早くも先手よし、というわけではありませんが、受けに自信がないととても指しきれないでしょう。
第2図からは、△4二角▲4五歩△1二玉▲4四歩△同銀▲4五歩△同銀▲1三桂成! △同桂▲4四歩△5三金▲1五歩(第3図)と進み、藤井九段の攻め、木村九段の受けという展開になりました。
【第3図は▲1五歩まで】
もし、このような角筋を生かした攻めが怖いのでしたら、8八に囲う金美濃ではなく、▲5九角~▲7七桂~▲8九玉~▲7八金と囲うミレニアムがよいでしょう。では、次に囲いの発展形を見ていきましょう。
堅固な穴熊への発展も
囲いの発展形:第1図から、▲9八香、▲9九玉、▲8八銀(第4図)と、三手進めると穴熊に組むことができます。
【第4図は▲8八銀まで】
7八の金は浮いていますが、そのぶん上部が厚く、また▲6八銀~▲7九銀右とさらに堅固な穴熊へ発展させる含みも残っています。いったん金美濃に組んでから穴熊を目指せば、金の位置は7八に限定されてしまいますが、離れ駒がなく組むことができます。▲9八香や、▲9九玉の局面で戦いを仕掛けられても、離れ駒がないので強く迎撃することができますよね。
また、第1図から、▲6五歩~▲6六銀(第5図)と6筋の位を取るのもよい形ですね。
【第5図は▲6五銀まで】
だいたいは▲6六歩に△6四歩と6筋の位を取らせないように指してくることが多いので、なかなか第5図のような形にはなりませんが、ここの位を取れれば相手も高美濃などに組めなくなりますし、陣形勝ちが望めることが多くなります。
また、第1図から、▲9八玉と寄り、▲8八銀~▲8六歩~▲8七銀と銀冠に組んだ実戦例もあり、金美濃はいろんな形に発展させることができます。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。