ライター一瀬浩司
たった三手で囲いが完成?三手囲いの組み方とは?【玉の囲い方 第65回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年04月23日
今回のコラムでは「三手囲い」をご紹介します。三手? たった三手で囲いができるの? と思われるでしょうが、それではどういう囲いなのかを見ていきましょう。
囲いの特徴:まず、三手で思いつくのは第1図でしょう。
【第1図は▲4八銀まで】
初手に▲5八飛と中飛車に振り、▲6八銀~▲4八銀と二枚の銀を上がれば、金銀四枚に飛車付きという囲いが完成します。将棋を始めてしばらくすると、この囲いを思いついて最強の陣が完成した! と喜んでいた記憶のある方は多いと思います。もちろん、最強というわけではなく、このままでは角の頭も薄いですし、そちらを守ろうと▲7八金と上がると密集形が崩れてしまいます。また、二枚の銀も攻めに使うと囲いから離れてしまいますし、このままでは攻撃形を作っていくことが大変ですね。
というわけで、これが三手囲いではありません。はて? ほかに三手ってなにがあるの? と思われるでしょうが、プロの実戦からそちらを見ていきましょう。第2図は平成7年3月23日、第45期王将戦1次予選、▲真部一男八段ー△岡崎洋四段戦(肩書は当時)です。
【第2図は▲4八銀まで】
真部九段は中飛車に振り、▲4八玉~▲3八玉と玉を移動させて2八までいかず、▲4八銀と上がって囲いを作りました。初手からではなく、▲4八玉、▲3八玉、▲4八銀と囲いを作るのに三手掛けるので「三手囲い」というわけです。第2図からは、△6三銀▲5六銀△1四歩▲1六歩△9四歩▲9六歩△7二飛▲4五銀 と、真部九段が左銀を繰り出して動いていきました。次に第3図です。
【第3図は▲3七金まで】
平成18年3月8日、第56期王将戦1次予選、▲伊奈祐介五段ー△前田裕司八段戦(肩書は当時)です。前田八段が四間飛車で三手囲いを採用しました。もし、第3図の後手の形が美濃囲いなら? ▲5三角と打ち込まれて馬を作られてしまいますね。6二の銀で5三の地点をカバーしているので、角交換型でも安心して5筋を突くことができます。
ここから前田八段は、さらに玉が7二なのを生かす指し方をします。△8二角! と自陣角を打ちました。次に△2五桂~△7四歩の狙いがあるので、伊奈六段は▲2六歩と辛抱しましたが、交換した2筋の歩を打たせることに成功しました。
第4図は昭和51年8月31日、第26期王将戦挑戦者決定リーグ戦、▲板谷進八段ー△大山康晴棋聖戦(肩書は当時)です。
【第4図は△6二銀まで】
板谷九段が右四間飛車からの急戦を狙い、大山十五世名人がそれに対応するため三手囲いで素早く囲いを組みました。第4図から、▲9五歩△3三角▲6八銀△4一飛▲7七角に、△5三銀と守りの銀を上がってさらに4筋を強化していきました。
それでは、また先手の駒だけを配置して、囲いを組むまでの手順を見ていきましょう。
囲いを組むまでの手順:初手から▲7六歩、▲6六歩、▲6八銀、▲5八飛、▲4八玉、▲3八玉、▲4八銀(第5図)。
【第5図は▲4八銀まで】
中飛車での組み方にしましたが、四間飛車、三間飛車、向かい飛車でももちろん有力です。次回は組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。