ライター一瀬浩司
対振り飛車における角道を開けない戦法のひとつ「鳥刺し」の注意点と発展形とは?【玉の囲い方 第46回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年08月30日
前回のコラムでは、対振り飛車における角道を開けない戦法のひとつ、「鳥刺し」の組み方をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。
それでは、鳥刺しに組むまでの手順の復習です。初手から、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲2五歩、▲3六歩、▲6八銀、▲5七銀左(第1図)。
【第1図は▲5七銀左まで】
それでは、まずは組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点
前回のコラムで説明しましたように、飯島流引き角戦法や銀冠穴熊のように、玉の移動に神経は使うことは必要ありません。また、相手が居飛車か振り飛車か態度を保留してきても左銀の動きを決めていないので、対応しやすいというところもあります。例えば、第2図は後手が△8四歩と居飛車にしてきたところです。
【第2図は△8四歩まで】
第2図からは、▲7六歩とすれば△8八角成▲同銀△8五歩としてきても▲7七銀で問題ありませんし、△4四歩ならば▲6八銀として△8五歩には▲7七銀で問題なく居飛車にも対応できます。ただし、玉を7八へ移動しておりますので、第2図から▲7六歩△4四歩▲6八銀に△7二銀から棒銀にされたり、いま大流行中の雁木の形などから急戦を狙われると、玉が6九にいるときよりも当たりが強くなってしまいます。もちろん、これですぐに悪くなるというわけではありませんが、居飛車にされたときは当たりが強くなってしまうということも頭に入れておいてください。それでは、次に囲いの発展形を見ていきましょう。
囲いの発展形
囲いの発展形というよりは、第1図からの方針と言ったほうがよいかもしれません。第3図は平成20年4月30日、第58期王将戦1次予選、▲鈴木大介八段ー△豊川孝弘六段戦(段位は当時)です。
【第3図は△7五歩まで】
第1図の形から▲4六銀~▲3五歩(実戦は鳥刺し側が後手なので△6四銀~△7五歩)と仕掛けたところです。振り飛車の切り札は▲6五歩のカウンターですが、いま▲6五歩と突いても△同銀▲7五歩に△7六歩と打たれて、▲8八角は△8六歩、▲5九角は△3四歩でうまくいきません。そこで鈴木九段は▲5九角と引き、△7六歩▲3六歩△7二飛▲3七角と角を転換させましたが、豊川七段はここで△3四歩(第4図)と角道を開きました。
【第4図は△3四歩まで】第4図で▲7六銀は△6六角ですし、▲6五歩と突いても△7三銀引と辛抱されると9九の香取りが受けにくいです。実戦は第4図以下▲6八金△1四歩▲9八香△5五歩▲7六銀△8六歩▲7七金(▲8六同歩は△8八歩)から、ねじり合いが展開されました。
続いて第5図です。
【第5図は△3一角まで】
昭和52年12月27日、第32期棋聖戦1次予選、▲淡路仁茂五段ー△谷川浩司四段戦(段位は当時)です。今度は△6四銀と出た後に、谷川九段が△3一角と引き角にして角を使った進行です。実戦は第5図から▲6八角△1四歩▲1六歩△5二金右▲5八金左△7三桂▲9六歩△9四歩▲4六歩△8四飛▲3六歩△7五歩(第6図)と谷川九段が3一に引いた角を生かして仕掛けていきました。
【第6図は△7五歩まで】
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。