ライター一瀬浩司
歩をぶつけた後の指し方は?矢倉における4六銀、3七桂型の攻め【第51回 矢倉の崩し方】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年08月28日
今回のコラムも、矢倉における4六銀、3七桂型から攻めていく指し方を解説していきます。それでは第1図です。
【第1図は▲2五歩まで】
先手が▲3五歩と仕掛け、△2四歩と突いた手に対し、▲2五歩とさらに先手が歩をぶつけた局面です。第1図からは△3五歩と△2五同歩が考えられますが、順に見ていきましょう。
まずは、△3五歩と取る手からです。▲3五同銀は△3六歩があるので、▲2四歩と取り込みます。対して後手も△3六歩と突き、お互い2筋と3筋の歩を伸ばし合って我が道を行く展開ですね。はたしてどちらがよくなっているのでしょうか? せっかく2筋を取り込んだのだからと△3六歩に▲2八飛と回りたくもなりますが、△3七歩成▲同銀△2五歩(第2図)となると、なにかどこかで見かけた図にはなりませんか?
【第2図は△2五歩まで】
そうですね。前回のコラムの第4図と同じ局面です。前回の復習も兼ねて、ここからどうなるかを見ていきますと、▲2五同飛は△3四金▲2九飛△2四銀、▲3六銀も△2四銀▲2五銀△同銀▲同飛△2三歩でいずれも桂損が大きく、先手失敗の図となってしまいますね。では、せっかく2五の歩が進んでスペースがあいたので、△3六歩のときに▲2五桂と跳ねてみましょう。後手は当然△2四銀(第3図)と逃げてきます。
【第3図は△2四銀まで】
よくある2六に先手の歩のいる形でしたら、ここから▲3五銀とぶつけたり、▲3六飛と歩を払ったりする手がありますが、第3図は2筋の歩が交換されたような形ですので、桂を支える駒がありません。よって、▲3六飛や▲3五銀はいずれも△2五銀と桂を取られてしまいます。
したがいまして、第3図では2五の桂取りを受けなければなりません。▲2六歩では、せっかく交換した歩を打つのでつまらないですね。ですが、次に▲3六飛と歩を払う手や▲3五銀とぶつける手が残っているので、実は有力ではあります。とはいえ、これでは成功しているとは言えませんよね。
と、いうことで▲2八飛と寄って攻め続けたいところです。△4五歩と突かれる手がありそうですが、▲3五銀で△同銀は▲3三桂成がさく裂しますし、△2三歩も▲2四銀△同歩▲3三歩△同桂に▲1三桂成(第4図)があります。
【第4図は▲1三桂成まで】
△1三同玉は▲2四角△2二玉に▲1三角成! △同玉▲1四歩△1二玉▲1三歩成までの詰みがありますし、△1三同香も▲1四歩△同香▲同香で△3七歩成には▲2四角で△2八とには▲1三角成△2一玉▲1二銀までの詰みがあり、後手は△3七歩成とするヒマがありません。こうなれば先手大成功ですが、▲2八飛にじっと△2三歩(第5図)と打つ手が手堅いです。
【第5図は△2三歩まで】
これなら▲3五銀と出られても、△同銀▲同角△3七歩成で後手よしですし、▲3三歩としても△同桂▲同桂成△同金寄で後続の攻めがなく、今度こそ△4五歩と突く手が残ります。
これで△3五歩に▲2四歩はうまくいかないということになりますが、ここまで読まれて疑問に思われたところがあった方は、かなりの実力者です。第1図から△3五歩と取った手に対し、「▲3五同銀は△3六歩があるので、▲2四歩と取り込みます」。この一文が実は問題の箇所でした。
次回のコラムでは、第1図から△3五歩▲同銀△3六歩となった局面はどうなのかを見ていきます。