4つの基準を学び「形勢判断」できるようになろう!【山口女流1級が教える棋譜並べ】

4つの基準を学び「形勢判断」できるようになろう!【山口女流1級が教える棋譜並べ】

ライター: 山口絵美菜  更新: 2018年07月24日

「棋譜並べ」シリーズ第三弾!前回は序盤・中盤・終盤を通して、ざっくりと流れをつかむことをテーマにお話ししました。一局の流れを大まかにつかめるようになったら次の段階!さらに詳しく棋譜を見ていきましょう。

今回のテーマは「形勢判断」。ある局面においてどちらが良いのか、悪いのかを判断します。形勢判断の結果によって、その後の方針や戦い方、時間の使い方が変わってくるほど、大事な作業です。形勢判断ができるようになると、局面をしっかりとらえられるようになるので、見るのも指すのもより楽しくなること間違いなしです!

形勢判断は

「玉の堅さ」

「駒の損得」

「駒の働き」

「手番」

の4つの基準からなります。基準ごとに先手・後手のどちらが良いかを判断していき、総合的に判断して優劣を決めます。それでは一つずつ詳しく見ていきましょう!

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イベントで大盤解説をする山口女流1級。撮影:池田将之

(1)玉の堅さ

どちらの玉がより堅いか?いわば防御力です。どちらが堅いか判断しにくいときは「玉の近くにいる金銀の枚数」「王手のかかりにくさ」を比べてみましょう。金銀が自玉の周りにいるほど相手の攻めを受けやすく、王手がかかりにくいほど攻めにくい玉なので、堅いと言えます。大事なのは「相対的な堅さを見る」ということ。例えば先手玉の守りが金一枚だとして、後手玉が裸玉(守り0枚)ならば先手玉の方が堅く、金銀2枚で守られていれば後手玉の方が堅くなります。この辺りは判断が難しいので「自分ならどちらの玉が安心かな?」と考えてみるのもいいでしょう。

(2)駒の損得

駒をどれだけ得しているか、損しているか?いわば戦力です。平手戦の場合、初めはお互い駒20枚(玉・飛車・角・金2枚・銀2枚・桂2枚・香2枚・歩9枚)を持っています。その後、駒を交換したり、取ったり、取られたりすることで持っている駒の種類や枚数が変わります。駒の損得を計算する時は、駒の増減を調べましょう。増減した駒の枚数や種類を数え終わったら、次は「駒の価値」に注目。駒の価値は歩<香<桂<銀<金<角≦飛車の順に高くなっています。ざっくり言うと価値の高い駒が増えて、低い駒が減っていれば駒得、その逆が駒損のイメージです。ピンとこない方は目安として「歩=1点 香=3点 桂=4点 銀=5点 金=6点 角=8点 飛車=10点」で計算してみましょう。相手より得点が高ければ駒得、低ければ駒損です。

(3)駒の効率

駒がどれだけ働いているか?いわば稼働率です。初めから全駒の働きを見るのは難しいので、まずは大駒(飛車・角)が「戦いor守りに参加できているか」を見てみましょう。飛車は縦・横の利きが戦場や自陣に利いているかを見ます。角は四方に利く駒なので、急所を睨んでいるか確認。余裕があれば銀・桂も攻めや守りに参加しているかチェックしてみましょう!より多くの駒が働いているほうに軍配が上がります。

(4)手番

次に指すのはどちらか?手番を握っていると次に攻めるのか守るのかを自由に選択することができるので、手番の側にポイントが入ります。

以上4つの基準で優劣を総合的に判断します。そこで気になるのが「いつ形勢判断をするのか?」ということ。棋譜を並べていて「この局面はどっちが良いんだろう?」と思ったタイミングですればバッチリです!「序盤」「中盤」「終盤」で1度ずつ、計3回形勢判断をするというのも一案。

この場合のコツは

序盤:(1)玉の堅さ(3)駒の働きを見る。

中盤:駒の交換が一段落したところで(2)駒の損得(3)駒の働きを丁寧に判断する。

終盤:スピードが大事になってくるので(1)玉の堅さ(4)手番が重要。

となります。形勢判断をすることで、根拠のある良し悪しの判断ができるようになっていきます。感情に流されず、冷静に局面を分析する手助けにもなりますよ!焦らずゆっくり取り組んでみてください。

棋譜並べ

山口絵美菜

ライター山口絵美菜

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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