ライター高野秀行六段
矢倉は将棋の純文学!相居飛車で人気の戦法「矢倉」の基本を学ぼう【はじめての戦法入門-第18回】
ライター: 高野秀行六段 更新: 2018年05月23日
皆さん、こんにちは。高野秀行です。前回で振り飛車編をひと区切りさせて頂き、今回から「相居飛車編」をご覧いただきたいと思います。
「相居飛車」といっても戦法は多岐に渡ります。現在プロの公式戦で主流戦法となっている「角換り腰掛け銀」。この戦法は「棒銀」や「早繰り銀」などにも途中、分かれます。
次に「横歩取り」「相掛り」。こちらも横歩取りなら△8四飛型、△8五飛型。相掛りなら▲2八飛と深く引く、▲2六飛と中段に引いてから「ひねり飛車」などの戦法にもなったりします。
これらたくさんの戦法のある中、「相居飛車」と聞いてまず思い浮かぶのはそう、「矢倉」ではないでしょうか?
「将棋の純文学」ともいわれたこの戦法は、プロ、アマ問わず人気の戦法で、私も一番好きな戦法です。「相居飛車編」では、まずこの「矢倉」から見ていくことにしましょう。
「矢倉」と一言にいっても、その中で多くの作戦に分かれます。まずは第1図をご覧ください。
3、4年ほど前まで「矢倉」といえばこの図ともいえる局面。お互い矢倉囲いを完成させる途中の局面で、まずはこの局面までの駒組みをご覧ください。
初手より
▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩 ▲6六歩△6二銀▲5六歩△5四歩 ▲4八銀△4二銀▲5八金右△3二金 ▲7八金△4一玉▲6九玉△5二金【第1図は△5二金まで】
初手に角道を開けたあと、▲6八銀と上がり▲6六歩と振り飛車のように角道を止めます。ここは▲7七銀と上がっても駒組みを進めることができます。
△6二銀に▲5六歩と5筋を突くのが大切なところ。5筋を突かずに駒組みを進めると、後手から△5五歩と参考1図のように位を取られる可能性があります。こうなると先手は将来、角の使い方が難しくなります。5筋を突いてから金を動かすと覚えると良いでしょう。先手と後手、同じような動きで駒組みが進みます。
【参考図1】
第1図からの指し手
▲6七金右△7四歩▲7七銀△3三銀
▲7九角△4四歩▲3六歩△3一角
▲3七銀△6四角
【第2図は△6四角まで】
▲6七金右~▲7七銀と動かします。これが矢倉の外壁となります。ここまでくれば「矢倉」が80%ぐらいできたといって良いでしょう。
ここで▲3六歩~▲3七銀と隙あらば攻めるぞ、という姿勢を見せ△6四角と後手が牽制したところが第2図となります。ここからいよいよ玉の入城となります。
第2図からの指し手
▲6八角△4三金右▲7九玉△3一玉▲8八玉△2二玉
【第3図は△2二玉まで】
後手は3一~6四と大きく角を動かしましたが、先手は小さく▲6八角と上がります。これによって、7七銀+7八金+6七金の矢倉に玉が入城する道ができました。後手も△4三金右で外壁が完成し、▲8八玉△2二玉でお互いに「矢倉囲い」が完成しました。
ここで先手に注意点が一つあります。▲6七金右~▲7七銀と矢倉の外壁を作ったあと、角を▲7九角~▲6八角と動かし、玉が入城する道を作ります。先に▲7九玉と寄ると、参考2図のように玉が入城することができなくなってしまいます。矢倉囲いを完成させる最後の関所なので、間違えないようにしましょう。
【参考図2】
では第3図までのポイントをおさらいしてみます。
(1) 5筋の歩を突いてから、▲5八金右、▲7八金と金を動かす
(2) ▲6七金右~▲7七銀の形を作る。これが矢倉の外壁となる。
(3) 角を▲7九角~▲6八角と細かく動かす。玉の入城する道ができ、▲8八玉で矢倉囲いが完成!
ここに記した3つのポイントを守れば、綺麗な矢倉囲いを必ず作ることでできます。ぜひ試してみてください。
さぁ、がっぷり四つともいえる第3図から戦いましょう、というのが、講座としての流れになりますが、ここで問題が一つ。
第3図まで互いに玉を囲うのに、かなりの手数を要します。「矢倉囲い」を作る間に、攻めてこられたらどうするのか?そうなんです、「矢倉」には互いに玉を囲い合う戦法の他、矢倉囲いを崩そうとする有力な急戦策が多くあるのです。
冒頭で「3、4年前は」と書きましたが、現在プロの公式戦ではいろいろな急戦策が指され、お互いに矢倉に囲い合う実戦が少なくなっています。
そこで本講座もその時流に乗るべく?まずは矢倉の急戦策と呼ばれる戦法から見て行きたいと思います。
次回は矢倉の急戦策をいえば、まずはこの戦法。「米長流」を解説したいと思います。