「角交換型振り飛車」を指しこなすための4つのポイントをご紹介!【はじめての戦法入門-第16回】

「角交換型振り飛車」を指しこなすための4つのポイントをご紹介!【はじめての戦法入門-第16回】

ライター: 高野秀行六段  更新: 2018年03月19日

皆さん、こんにちは。高野秀行です。
今まで「四間飛車」から始まり、「ゴキゲン中飛車」「三間飛車」そして「向飛車」と振り飛車のいろいろな戦法を見てきました。10年、いや5年前ならここまでで振り飛車編を終えることとなるのですが、現代将棋では、さらに一つ振り飛車が加わりました。それが「角交換型振り飛車」です。
さっそくどんな戦法なのか見ることにしましょう。

角交換型振り飛車

初手より
▲7六歩△8四歩▲6八飛△3四歩▲4八玉△8五歩▲3八玉(第1図)

【第1図は▲3八玉まで】

▲7六歩△8四歩に角道を止めずに▲6八飛と回るのが「角交換振り飛車」の第一歩。8筋を伸ばされますが、平然と▲3八玉と玉を囲います。△8六歩と突破されてしまいそうですが、大丈夫なのでしょうか?

第1図からの指し手
△8六歩▲同歩△同飛▲2二角成△同銀▲7七角△8二飛▲8四歩△3三桂▲8八飛(第2図)

【第2図は▲8八飛まで】

通常であれば、△8六歩から8筋を突破されてしまいす。この攻め筋があるので、▲6六歩と角道を止め▲7七角と備えるのが、従来の考え方でした。しかし、△8六歩には▲2二角成~▲7七角が「ゴキゲン中飛車編」(第5回参照)でも解説しました厳しい反撃です。△8九飛成は▲2二角成で次に▲8八馬と竜を閉じ込める手があるので、△8二飛と引きますが、▲8四歩~▲8八飛と気持ちよく位を取って、第2図は不満がありません。

かつては「振り飛車には角交換を狙え」という格言があったのですが、今は振り飛車から角交換をして反撃を狙うという考え方に変わってきたのです。

第1図からの△8六歩は無理筋で、なんら心配することはありません。そこで、お互い駒組みを続けます。

第1図からの指し手
△6二銀▲2二角成△同銀▲8八飛△4二玉▲6八銀△3二玉▲2八玉△5二金右▲3八銀△1四歩▲1六歩(第3図)

【第3図は▲1六歩まで】

△8六歩が無理筋なので居飛車側は駒組みを進めることとなります。△6二銀に▲2二角成と角交換をし、▲8八飛と回り8筋を守ります。▲6八飛と途中下車、そして自ら▲2二角成の角交換と手損になるのですが、そんなことは全く気にすることはありません。▲8八飛と守った後は、「美濃囲い」に組んでおきましょう。そしてここからの布陣が「角交換振り飛車」で重要なポイントとなります。

第3図からの指し手
△3三銀▲5六歩△2二玉▲5七銀△3二金▲7七桂△5四歩▲6八金△4二金右▲8九飛△5三銀(第4図)

【第4図は△5三銀まで】

居飛車側はどのように玉を囲うのでしょうか?大きく分けて二つの方法があります。一つは手順のように「矢倉」模様に組み上げる。もう一つは「銀冠」を作るかです。(参考1図)。

【参考1図】

矢倉は金銀が密集するので、作りやすく、「銀冠」は多少の手数はかかりますが、玉頭の厚みができます。どちらも有力な手段です。
どちらを居飛車側は選んでも、「角交換振り飛車」のやることは一つです。『5七銀、6八金、7七桂、8九飛』の陣形を作ること。これがこの作戦最大のポイントだと覚えてください。

本来「美濃囲い」は▲5八金左と金銀三枚で完成となりますが、それですと、▲8九飛と引いた際に△7八角(参考2図)と打たれて、馬を作られてしまいます。

【参考2図】

隙を作らないように▲6八金と真っ直ぐ上がるのです。
さぁ、この布陣から積極的に攻めることにしましょう。

第4図からの指し手 ▲8五桂△同飛▲8六歩△8二飛▲8五歩△7四歩▲8四歩△7一桂▲8三歩成△同桂▲7一角△7二飛▲5三角成△同金▲8三飛成(第5図)

【第5図は▲8三飛成まで】

第4図が「角交換振り飛車」、駒組みの頂点。ここで▲8五桂が狙いの一着です。歩を取っただけでは、桂をタダ捨てた「悪手」の烙印を押されてしまいます。しかし、▲8六歩から▲8五歩~▲8四歩の逆襲が厳しく、単純な攻め筋ですが、この形に限って成立します。

▲8四歩を受けるため△7一桂と受けますが、▲8三歩成~▲7一角が厳しい追撃。第5図は振り飛車側が角銀交換で駒損ながらも△7一飛は▲6二銀。△4二飛は▲8一竜で次に▲4五桂が残り、自然と駒損が回復出来る形で「角交換振り飛車」大成功となりました。

ポイント

では今回のポイントを整理してみましょう。

(1)振り飛車でありながらも、角道を止める必要はない。第1図からの△8六歩は▲2二角成~▲7七角で大丈夫。

(2)駒組みを進める際、▲2二角成と自ら角交換をして▲8八飛と8筋を守る。手損になるが、全く気にする必要はない。

(3)居飛車がどんな囲いを選んでも、「角交換振り飛車」のやることは一つ。『5七銀、6八金、7七桂、8九飛』の布陣を組み上げる。これがこの作戦の最大のポイント。

(4)陣形を組み上げたら、▲8五桂が狙いの一着。8筋から逆襲して、「角交換振り飛車」大成功!

「角交換振り飛車」といっても、「ゴキゲン中飛車」や「三間飛車」などいろいろな出だしから派生するのですが、基本は一緒で『5七銀、6八金、7七桂、8九飛』を組み上げての▲8五桂です。

難しい理屈はいりません。得意戦法に一つ加えてみてはいかがでしょうか。

単純ですが、とても手強い▲8五桂からの逆襲。次回は居飛車側の対策を練ってきます。ぜひ次回もごらんください。

はじめての戦法入門

高野秀行六段

ライター高野秀行六段

1972年6月横浜市生まれ。1984年に6級で中原誠十六世名人に入門。1998年4月に四段。棋風は居飛車本格派。趣味はゴルフ。将棋教室で多くの子供たちに将棋を教えている。

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