ライター一瀬浩司
矢倉を崩す100点満点の攻めとは?佐藤秀司六段VS勝又清和五段戦を参考にし攻め方を覚えよう!【第35回 矢倉の崩し方】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年05月21日
今回のコラムも、矢倉に対して4七銀、3七桂型から攻めていく指し方を見ていきます。それでは第1図です。
【第1図は△3四金まで】
いま、先手が▲3六歩と合わせた手に対して、後手が△3四金と力強く上がってきたところです。▲3五歩としても△同銀で△3六歩が残りますし、4七の銀を活用する見当もつかず、さあどうしましょう? ここまでが前回の話でした。
では、第1図からどうすればうまく攻めていけるのかを見ていきましょう。▲3五歩△同銀にあっさり▲3六歩(第2図)と打ってしまうのがこの後の攻め筋が見えてないとちょっと指せない手です。
【第2図は▲3六歩まで】
第2図から、△4六銀は▲同銀△同歩▲同角となって、次に▲2四歩△同歩▲3五歩△3三金引▲2五歩と攻めていく順があります。先手の持ち駒に銀が加わっていますので、継ぎ歩攻めがより厳しくなっていますね。
そこで、第2図から後手は△4四銀と引いてきます。もう一歩あれば▲4六歩と合わせて△同歩▲同銀と調子よく攻めていけますが、あいにく先手は歩切れ。ここで、次の手が見えずに諦めてしまったという方も多いかとは思います。▲4五桂(第3図)が攻めをつなげていく好手です。
【第3図は▲4五桂まで】
一見タダですが、△4五同銀、△同金のいずれも▲4六歩と打てば金駒を取ることができて駒得となります。第1図でいきなり▲4五桂は△同金▲4六歩のとき△3六金▲同銀△同歩で失敗ですが、▲3五歩△同銀▲3六歩と3五の歩を盤上から消した効果がここで出ています。さて、「では敵の打ちたいところで打て」の格言があるように△4六歩(第4図)はどうでしょう?
【第4図は△4六歩まで】
▲4六同銀に△4五銀とすれば▲同銀△同金で後手の桂得となります。ですが、そこで▲2四歩(第5図)と突けば、△同歩は▲同角△同角▲同飛△2三歩に▲5四飛と回れますし、△4六歩と角筋を止めて頑張ろうとしても、▲3四銀が金取りと▲2三歩成の両狙いで厳しい一手になります。
【第5図は▲2四歩まで】
第3図の局面は成功とまで言えるかは微妙な局面ではありますが、こうなれば4七の銀の進路もできて、ひとまずは満足な進行とはいえるでしょう。100点満点の解答なのに微妙な局面なの? と思われるでしょうが、やはり相手もがっちりとした矢倉に囲っていますので、正確に応じられるとすぐにははっきり優勢というところまでいくのも難しいと言えます。
それでは、プロの実戦でもこちらの攻め方が指されていますので、そちらを見ていきましょう。第6図は平成17年4月26日に行われた第55期王将戦一次予選、▲佐藤秀司六段ー△勝又清和五段戦(段位は当時)です。
【第6図は△3四金まで】
第6図から、▲3五歩△同銀▲3六歩△4四銀▲4五桂と進みました。そこから、△4三歩と辛抱し、▲4八飛△2五金▲2八飛△2四金▲4六銀(第7図)となって難解な中盤のねじり合いに突入していきました。
【第7図は▲4六銀まで】
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。