ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2018年05月01日
終盤において相手の攻めを遅らせるのに非常に役立つ手筋です。単に「底歩」と省略して使われることもあります。
【第1図】
第1図は後手に二枚飛車で攻められている局面です。非常に破壊力がある攻めですが、後手の攻め駒が飛車だけならばここで▲5九歩が一歩千金の受け。これで二枚飛車の利きをシャットアウトできます。
「金底の歩岩より堅し」の格言は自陣二段目にいる金の下に歩を打って、飛車の横利きを受ける場合に使われます。歩と金の連結が良く、たった2枚でも強力な防壁となります。
【第2図】
金底の歩の弱点は何でしょうか。第2図、先ほど▲5九歩と受けた時と同じ局面ですが、後手に持ち駒があります。▲5九歩の受けに対し△5一香と攻められてしまうと金底の歩がマイナスになっています。一番下に歩を打ってしまったため、相手の香打ちに対応しづらいのが弱点です。また、歩が利く場合は第2図で△5七歩も厳しくなります。▲5七同金なら△5九飛成でたちまち受けなしです。▲6八金とかわしても同様です。
底歩を打っても二段目の金を小駒で攻められてしまう場合は、1手稼げても相手の攻めが厳しくなってしまうことがあります。その場合は受けきるのではなく手を稼ぐと割り切って、攻め合い勝ちを目指す展開です。
もちろん底歩が残ったままの攻め合いは、その筋で歩を使えない状態ですので、二歩には注意しましょう。
【第3図は▲8四角まで】
第3図はプロの実戦より。竜の利きが一段目にあるままだと、どこかで▲6二角成△同金上で利きが通ってくるのが怖いところ。ここでは△7一歩と受けるのが手筋です。金底の歩とは違いますが、銀の利きに歩を打って飛車の利きを遮断するのも一種の底歩です。特に振り飛車対急戦においては4八(6二)に銀が残っていることが多いので、3九(7一)に歩を打って一段目の飛車の利きを止める手は生じやすいのです。実戦は△7一歩以下▲7九歩△6八竜▲8二竜と進みましたが、これなら金銀のバリケードが生きる形で、後手玉が見えにくい格好です。
【第4図は▲3一飛まで】
第4図は髙崎一生六段の実戦から(2013年10月・第55期王位戦予選・▲村山慈明六段△髙崎六段)。ここで桂取りを受けながら3五の銀を受ける△3三桂も見えますが、▲6三銀成と使われてしまいます。ここは飛車の利きを止める△4一歩が堅い受け。これで先手の攻めをシャットアウトできました。以下▲6五角△2七角成で後手陣に迫る手がありません。
【第5図は▲3三歩成まで】
進んで第5図。後手の美濃囲いは安全で、ここが決めどころです。とはいえ金底の歩で固めてある先手陣は堅そうで、どう攻めるのが正しいでしょうか。今度は逆にバリケードを崩す展開です。
実戦は△5七歩▲6八金寄に△1四角が厳しい攻めになりました。△5七歩で底歩の形から金をずらし、端角で6九の金を狙います。これなら5九歩に触らない攻めとなるため、底歩の堅さも半減です。実戦は以下▲4八歩△同飛成▲4二とに△6九角成▲同玉△8八金で寄り筋に入りました。うまく底歩で攻めを防ぎ、反撃に転じてからは底歩で堅い陣形を崩した一局でした。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段