ライター一瀬浩司
相振り飛車初心者にオススメの囲い「金無双」とは?
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年03月29日
今回のコラムでも、相振り飛車での囲いについてご紹介します。これまでは振り飛車対居飛車でよく使われる「美濃囲い」と「穴熊囲い」。そして相居飛車で使われる「矢倉囲い」についてご紹介しました。
今回ご紹介する囲いは、これまでご紹介してきたような囲いではなく、相振り飛車限定での囲い「金無双」です。それではこちらがどういう囲いなのか? そちらを見ていきましょう。
囲いの特徴
第1図をご覧ください。
【第1図は▲2八銀まで】
後手は美濃囲いに囲う途中です。対する先手はいままで見たことのない囲いですよね?
これが「金無双」です。5八と4八に二枚金が並んでいるので、別名で「二枚金」と呼ばれることもあります。なぜこの囲いが相振り飛車限定なのか?
第2図をご覧ください。
【第2図は▲2八銀まで】
四間飛車対居飛車で金無双に組んだ局面です。第1図では、後手の飛車が2筋に構えており、歩も2五まで伸びてきています。2八の銀がそちらの守りに働いていますね。
では、第2図はどうでしょう? 2筋方面を攻められる心配はまったくなく、2八の銀が壁となっており悪形になってしまっています。左辺から攻められたとき、2八の銀がいなければ、逃げ道があったのに...ということにもなりかねません。また、2八に囲う美濃囲いや、1九に潜る穴熊囲いに比べて戦場となる8~6筋に近いということも、対抗系に適さない理由のひとつになってきます。
相振り飛車では、囲いの周辺で攻防が繰り広げられますので、上部からの攻めに強い形の金無双が適しています。
昭和の時代では、相振り飛車の囲いは、ほとんど金無双でした。いまでは、相振り飛車での囲いも見直されてきており、美濃に囲うことも多くなっています。
しかし、相振り飛車を指し始めたばかりという方には、上部にまんべんなく強い金無双がオススメです。それでは、先手側の駒のみを配置して、組み方を見ていきましょう。
囲いを組むまでの手順
初手から、▲7六歩、▲6六歩、▲6八銀、▲6七銀、▲7七角、▲8八飛(第3図)。
【第3図は▲8八飛まで】
今回も、これまで解説してきました囲いのように、向かい飛車に振った場合で解説していきます。
第3図から、▲4八玉、▲3八玉、▲5八金左、▲1六歩(第4図)。
【第4図は▲1六歩まで】
美濃や穴熊では、端攻めをされる心配がありますので、端歩は突かないほうがよい場合も多いですが、金無双では銀の守りがありますので、端は突いたほうがよいでしょう。美濃や穴熊では玉が2八に行きますが、金無双では玉が進むのはここまでです。第4図から、▲4八金上、▲2八銀(第5図)。
【第5図は▲2八銀まで】
これで金無双の完成です。次回は、組む際の注意点や発展形などを見ていきましょう。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。