ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2018年03月13日
今回の格言は将棋を指す上で絶対に覚えておきたいものです。
・開戦は歩の突き捨てから
こちらの格言は戦いを起こす時はまず歩を突き捨てるということです。具体的な例を定跡となっている仕掛けから見ていきましょう。
【第1図は▲6八銀まで】
第1図は四間飛車対居飛車穴熊の戦いです。次に▲7九銀右~▲6八角となってしまうと先手の作戦勝ち。よって後手はここで動いていきます。
第1図以下の指し手
(1)△5五歩▲同 歩
(2)△4六歩▲同 歩△5五銀
(3)▲2四歩△同 歩
(4)▲3五歩
【第2図は▲3五歩まで】
後手は5、4筋と突き捨て、先手は2、3筋を突き捨てました。それぞれ意味を解説していきます。
(1)の△5五歩は仕掛けの始まりで、攻め駒の4四の銀を使うのに必要です。▲5五同歩とさせれば銀を進出させることができます。
(2)の△4六歩も攻め駒をスムーズにさばくのに必要な一手。この歩を入れないと後に△4六飛と走ることができません。
(3)の▲2四歩も(2)同様飛車の捌きのために必要な一手です。4筋の突き捨てと違い、対振り飛車において2筋の突き捨てが遅いと手抜かれてしまう可能性があるので、△2二飛と逆襲される展開さえなければ早いくらいの気持ちで大丈夫です。
(4)の▲3五歩は3三の角を追い払って▲2四飛と走る狙いです。第2図以下は△4六飛▲3四歩△4四角▲2四飛が予想され、いい勝負です。
【第3図は△3三銀まで】
続いて第3図は角換わり腰掛け銀の同型で、古くからある局面です。ここも次々と歩を突き捨てて攻めていきます。
第3図以下の指し手
(1)▲4五歩△同 歩
(2)▲2四歩△同 歩
(3)▲1五歩△同 歩
(4)▲7五歩△同 歩
(5)▲3五歩(第4図)
【第4図は▲3五歩まで】
今回は先手が5つも歩を突いていきました。これだけ歩を突き捨てる戦型は珍しいです。他の突き捨て方もありますが、今回は最も多かった例です。
(1)の▲4五歩は仕掛けの始まりで、ここを突き捨てれば5六銀や3七桂のさばきが見込めます。
(2)の▲2四歩はやはり飛車を走れる形を作っておくためです。こちらは対振り飛車の時と同じですが、相居飛車では手抜かれる可能性が低く、タイミングは多少異なります。
(3)の▲1五歩は相居飛車戦では頻出の筋。ここを突き捨てておくことによってどこかで▲1三歩と垂らして攻める手や、▲1五香と1歩補充する手が含みになります。
(4)の▲7五歩は後手の桂頭にキズを作るため。7四の空間を空けておけば1歩手に入った時に▲7四歩と打つ手が残って手番を握ることができます。
(5)の▲3五歩は攻め筋を広げるためです。ここの突き捨てが入れば後に▲4五桂と跳ねたあとに3筋に歩が利くなど、効果的です。
第4図以下は△4四銀や△3五同歩、△8六歩などが考えられます。なお、第3図から▲4五歩△同歩▲3五歩のように突き捨てが少なかった場合には後手も△6五歩と突いて反撃する順も有力です。△6五歩の突き捨ても銀桂の活用を見込んだ手になります。
どの戦型でもそうですが、駒をぶつけるのは歩が基本です。突き捨てのタイミングはプロでも悩むところがあるくらいで難しいのですが、突き捨てを忘れて飛車がさばけないような展開だけは避けたいですね。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段