ライター一瀬浩司
桂交換で満足しない!両王手を含みに攻める【矢倉の崩し方】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年02月25日
今回のコラムも、飛車角銀桂を理想的に配置した形から、矢倉を攻めていく指し方を見ていきましょう。それでは第1図です。
【第1図は▲2五同桂まで】
いま▲2五同桂と銀交換をしたところですが、これまで三回のコラムでは、第1図で後手がなにも受けなかった場合での崩し方をご紹介しました。三回前のコラムでは、▲1四歩△同歩▲3三歩、二回前のコラムでは▲1四歩△同歩▲同香△同香▲3三歩、前回のコラムでは▲3三歩△同桂▲1三桂成△同香▲1四歩と攻めていきました。いずれも先手がよくなりましたが、前回の▲3三歩からの攻め方がいちばんわかりやすいと思います。
それでは、今回からは、第1図から後手が受けてきた場合について見ていきましょう。まずは△2四歩(第2図)と突いて見ましょう。
【第2図は△2四歩まで】
このまま2五の桂を取られてはまずいので、攻め続けなくてはなりませんが、▲3三歩△同桂▲同桂成△同金寄(第3図)と進めてしまうと、先手は歩切れで、後続の攻めが難しい状況になってしまいます。
【第3図は△3三同金寄まで】
第3図から、▲1六桂と打って▲2四桂を狙っても、△3五桂と角筋を止められたたり、△2三銀と手堅く埋められても攻め続けていくことは困難です。こうなると2四に突いた歩が▲2五桂と打つ手も消して、よい働きをされてしまっていますね。単純な桂交換は攻めが続きませんでした。
では、別の攻め方を考えてみましょう。第2図から、▲3三歩と打ち、△同桂と取られたところで手を止めなければなりませんでした。▲3三同桂成は当然に見えますが、▲1三桂成(第4図)と薄くなった端に飛び込むのがうまい攻めです。
【第4図は▲1三桂成まで】
第4図で△1三同玉にはどう攻めましょうか? なんと後手玉には詰みが生じておりますので、手を止めて考えてみてください。
おわかりいただけましたか? では答え合わせです。▲2四角△2二玉▲1三角成! △同玉▲1四歩△1二玉▲1三歩成までです。
よって、第4図では△1三同香の一手ですが、▲1四歩△同歩▲同香(第5図)と進めて、攻めがつながっていきます。
【第5図は▲1四同香まで】
第5図で△1三歩と打つのは、▲同香成△同玉のとき、▲2四角△2二玉▲1三角成△同玉▲1四歩△同玉▲1五歩△同玉▲1七香△1六歩▲2四銀△1四玉▲1六香までの詰みがあります。かといって、第5図のままでは▲2四角と飛び出す手が▲1三角成以下の詰めろですこぶる厳しい手になります。▲2四角を防ごうと、△2五桂は▲同飛! と食いちぎる手があり、△同歩に▲1三角成で△2一玉は▲1二銀、△3三玉も▲2四銀までの詰みがあって、受けになっていません。第5図で△2三銀と打つのは、▲1九香と足しておいてこれも先手十分です。
よって、第1図から△2四歩と突く手には、▲3三歩△同桂▲1三桂成と攻めて先手よしとなりました。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。