ライター一瀬浩司
桂馬のタダ捨てからの送りの手筋【覚えておきたい矢倉の崩し方】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年02月18日
今回のコラムも、飛車角銀桂を理想的に配置した形から、矢倉を攻めていく指し方を見ていきましょう。それでは第1図です。
【第1図は▲2五同桂まで】
▲2五銀△同銀▲同桂と、銀交換をした局面です。前回のコラムでは、ここで後手がなにも受けなかったと仮定して、▲1四歩と突いて攻めていきました。以下、△同歩に▲3三歩と打ち、△同桂▲同桂成△同金寄に▲1四香が好手で、△同香▲2五桂で攻めが成功となりました。
今回は、これ以外にも攻め方はあるのかを見ていきましょう。では、もう一度、前回同様に▲1四歩△同歩と突き捨ててみましょう。そこで、▲3三歩と打ちましたが、今回は▲1四同香△同香と先に香車を走って捨ててから▲3三歩(第2図)と打ってみます。
【第2図は▲3三歩まで】
まず、△3三同桂は▲1三角成△2一玉▲1二銀と、あっという間に後手玉が詰んでしまいますので、この手はありません。
では、このまま3二の金はあきらめて△1七香成と飛車を攻めてくる手はどうでしょう? ▲3二歩成△同玉▲2九飛としても、金と香の交換で駒得となり、先手よしです。ですが、もっとよい攻めがあります。▲1一銀が思い浮かんだ方はとても鋭いです。△同玉なら▲3二歩成として一気に受けなしとなりますね。ですが、△3一玉と銀を取らずに逃げられると、▲3二歩成△同玉で1一の銀が残ってしまいそうです。▲1三銀と打つのも同様に△3一玉と逃げられてしまいます。では、△1七香成に対して、▲3二歩成△同玉▲3三歩は?これも、△同桂▲同桂成△同金で決まりませんね。
ほかに手は? ということになりますが、うまい攻めがあります。おわかりいただけましたでしょうか? ▲1三桂成(第3図)が好手です。
【第3図は▲1三桂成まで】
△3三玉には▲2四銀が好手で、△同歩▲同角まで後手玉は詰みですし、△3一玉は▲3二歩成△同玉▲2三飛成△4一玉▲4三竜で受けなしとなりますので、第3図で後手は△1三同桂と取るよりありません。そこで、▲3二歩成△同玉と金を取ります。ここで、▲1三角成は△2八成香と飛車を取られ、▲5二銀は△6四角、▲5二金は△5三金とされてまだまだ頑張られてしまいます。
でもよく局面を見て考えてください。飛車筋が2三まで通り、2一の桂が1三に移動しています。よい手が浮かび上がってきませんか? そうです。▲2一銀(第4図)が決め手になります。
【第4図は▲2一銀まで】
△3三玉は▲3二金までですし、△2一同玉も▲2三飛成△2二歩▲3二金△1一玉▲2二金までの詰みですし、△4一玉と逃げても▲2三飛成と飛車を成り込んで攻めが続いていきます。よって、第2図から△1七香成も▲1三桂成が好手できれいに決まりました。
では、△3三同金寄と取ってみましょう。これには、平凡に▲同桂成△同金としておいても、先手十分ですが、今度は▲1三銀と打つ手が有効になります。△1三同桂は▲同角成△1一玉▲1二歩△2一玉▲3三桂不成△同角▲1一歩成△同角▲1二金までの詰みがありますので、△3一玉と逃げるしかありませんが、▲3三桂成△同角に▲2二歩(第5図)でこれも先手よしです。
【第5図は▲2二歩まで】
第5図で△2二同金は▲同銀成△同玉▲4三金ですし、△1三桂も▲同角成で△2二金には▲2三飛成と成り込む手があるのでいずれも先手大成功となります。よって、第1図からは、▲1四歩△同歩▲同香△同香▲3三歩でも先手が攻めきれるということがわかりました。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。