ライター一瀬浩司
矢倉の攻略のコツをご紹介。歩を二枚持ったら▲3四歩を考えてみよう
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年01月09日
今回のコラムは、前回の応用編として解説していきます。それでは第1図(部分図)をご覧ください。
【第1図】
角がにらみ合っている状況ですが、矢倉ではこういう形が出てくることもあります。お互い角で3筋と7筋で歩を交換して、▲4六角△6四角と角を引き合ってぶつかったところです。銀がまだ3七なので、手はできにくそうですが、ここでも持ち駒にある二枚の歩が生きてきます。では、前回同様に▲3四歩と打ってみましょう。金や銀で取る手、4二へ引く手の三通り応手がありますが、それぞれ見ていきましょう。まずは△3四同銀と取る手からです。▲3五歩△4五銀で銀が死なないじゃん。そう思われる方は少し読みが浅いです。もう数手進めてみましょう。
▲6四角△同銀と角交換をして、▲4六歩(第2図)と突けば、4五の銀は死んでいます。
【第2図は▲4六歩まで】
これにて先手優勢。と、終わればよいのですが、後手もまだまだ抵抗する手段があります。第2図から、△3六歩と銀取りに打つのが後手用意の一手です。▲4八銀と逃げる手には△4六銀と逃げられてしまいます。そこで、▲4五歩△3七歩成▲同桂と取り合いになりますが、△3六歩と打たれると桂が死んでいるように見えますね? では、先手失敗じゃん。そう思うのは早合点です。気が付くと先手の4筋の歩がずんずんと進んでいます。▲4四歩(第3図)と取り込めば、△同金には▲7一角△4二飛▲2四歩で△同歩▲同飛△2三歩には▲4四飛と金を取れますし、△3七歩成も▲2三歩成△同金に▲3一銀で決まります。
【第3図は▲4四歩まで】
第3図で△4二金引には、▲2四歩△同歩▲2三歩△同金に▲4五角と打つ順(次に▲3一銀や、▲2三角成△同玉▲3四銀の狙い)もありますし、▲4五桂△3七歩成▲2六飛としておく順も有力です。と金は作られてしまいますが、次に▲4三銀の打ち込みや、▲2四歩△同歩に▲3四銀と置いておく手も厳しい狙いとして残っていて、いずれも先手よしです。
それでは、第1図からの▲3四歩に対して△同金と取る手を見ていきましょう。これにも▲3五歩△4五金▲6四角△同銀とここまでは同様ですが、▲4六歩と突くのは金の動きを生かされて△3五金で失敗します。そこで、今度は▲4六銀(第4図)とぶつけていく手が好手となります。
【第4図は▲4六銀まで】
△4六同金は▲同歩で▲3四歩△同銀▲7一角の攻めが残りますし、このままでも▲4五銀△同歩▲3四歩△同銀▲4四角の攻めが狙いとしてあります。第4図から△3六金とかわすのも、▲3四歩△同銀▲7一角△4二飛▲6五歩と調子よく手が続いていきます。
では、最後に▲3四歩に△4二銀を見ていきましょう。これには▲1五歩△同歩▲2六銀(第5図)がよいでしょう。
【第5図は▲2六銀まで】
△3四金と歩は払われてしまいますが、▲3五歩△3三金引▲1五銀と進めば、香を手に入れると▲3四香があるので、ガンガン攻めていくことができます。形によっては成立しない場合もありますが、歩を二枚持ったら▲3四歩。これを頭に入れながら攻めを考えていけば、矢倉の攻略に生きるケースも多くなるはずです。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。