美濃囲いに組む際の注意点。飛車を振る前に▲7八銀と上がる理由とは?

美濃囲いに組む際の注意点。飛車を振る前に▲7八銀と上がる理由とは?

ライター: 一瀬浩司  更新: 2017年11月01日

前回のコラムでは、美濃囲いの組み方についてご紹介いたしました。今回のコラムでは、美濃囲いに組む際の注意点と、美濃囲いからの発展形をご紹介していきます。その前に、まずは美濃囲いへ組む手順を復習しておきましょう。初手から、▲7六歩、▲6六歩、▲7八銀、▲6八飛、▲4八玉、▲3八玉、▲2八玉、▲3八銀、▲5八金左(第1図)で美濃囲いは完成です。

【第1図は▲5八金左まで】

組む際の注意点

それでは、ここで、美濃囲いに組む際の注意点を先手だけの駒を使用した部分図ではなく、後手の駒も配置して解説していきます。まずは、第2図をご覧ください。

【第2図は△8五歩まで】

後手がいま△8五歩と飛車先を伸ばしてきたところです。ここで、あと一手で美濃囲いが完成するからと、▲5八金左と上がってしまうと、すかさず△8六歩▲同歩△同飛と飛車先の歩を交換されてしまいます。次に△8八飛成と角を取られてしまいますので、▲8七歩と打ちますが、△8二飛と引かれた局面は、▲6七銀と上がると△8七飛成とされてしまうので、7八の銀が釘付けにされてしまいます。

飛車先交換の利もあり、こうなるといきなり苦戦に陥ってしまいます。では、なにが悪かったのでしょう? ▲5八金左では、▲7七角と上がっておけば、△8六歩▲同歩△同飛には▲同角と飛車を取ることができるので、飛車先は交換されません。

では、もうひとつ。前回のコラムで、なぜ▲7八銀と上がってから飛車を振ったのか? それを解説していきます。初手から、▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八飛△6二銀▲4八玉△4二玉▲3八玉△3二玉▲2八玉△5二金右▲3八銀△5四歩▲5八金左と、▲7八銀を上がらずに駒組みをしてみます。続けて、△5三銀▲4六歩△7四歩▲3六歩となったところで、△8五歩▲7七角△7五歩▲同歩△6四銀(第3図)と仕掛けられたらどうでしょう?

【第3図は△6四銀まで】

ここで、▲6五歩と反発するのが振り飛車の常套手段ですが、△7七角成▲同桂△7五銀となると、次に△7六歩と桂を殺す手と、△8六歩から飛車先突破を目指される攻めもあって、先手苦戦となります。

もし▲3六歩と突く手で▲7八銀と上がっていたら? 第3図の先手の駒の配置の7九銀を7八へ、3六歩を3七へそれぞれ移動させた局面を並べてみてください。▲6五歩△7七角成▲同銀となれば、先手は形よく角を取り返すことができますね。以下、△7五銀と出られても、例えば▲6六銀△同銀▲同飛とさばく手もあって、角を桂で取り返した局面とは大違いになります。ですので、わかりやすく最初に▲7八銀と上がってから飛車を振るのが、最初のうちはオススメです。

囲いの発展形

それでは、第1図に戻りましょう。この時点でもすでに十分堅いのですが、さらに囲いを発展させていくことができます。第1図から、▲1六歩、▲4六歩、▲3六歩、▲4七金、▲3七桂(第4図)と進めた陣形が「高美濃」と呼ばれる陣形です。

【第4図は▲3七桂まで】

上部に厚くなり、場合によっては▲4五歩や▲2五桂として、こちらから攻めていくこともできます。さらにもう少し進めましょうか。第4図から、▲2六歩、▲2七銀、▲3八金(第5図)と進めた陣形が「銀冠」と呼ばれる陣形となります。

【第5図は▲3八金まで】

さらに上部が厚くなり、▲2五歩と突いて攻めていくこともできますし、3六の桂頭も4七金と2七銀の2枚でカバーされています。これが美濃囲いの発展形になります。まずは、通常の美濃囲いで戦って、慣れてきたら高美濃や銀冠に発展させてみたらいかがでしょうか。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。

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