ライター一瀬浩司

知らないと指せない▲6五歩。雀刺しで矢倉を攻略する方法
ライター: 一瀬浩司 更新: 2017年11月26日
今回のコラムも、雀刺しから矢倉を攻める指し方を見ていきましょう。それでは第1図です。
【第1図は△2四銀まで】
▲1四歩の突き出しに、1三の銀を△2四銀とかわしたところです。前回のコラムでは、ここから▲2五歩と突き、△同銀なら▲1三歩成△同香▲同香成△同桂▲同角成で銀の利きがなくなるので端を破れました。
しかし、△2六桂と打たれると、▲1九飛には△6四角で、▲2八飛も△2五銀▲1三歩成△同香▲同香成△同桂▲1四歩△同銀▲2六飛△2四香▲1六飛△1五歩(第2図)と進んでうまくいきませんでした。
【第2図は△1五歩まで】
ここで、冷静になって第1図を眺めてみましょう。すぐに攻めるのはうまくいきませんが、もし先手が端攻め以外の別の手を指したとして、後手はすぐに端を補強することができますか?歩があれば△1二歩で簡単ですが、あいにく後手は歩切れ。よって、あまりゆっくりはできませんが、端以外にも手をかけることができます。
端を攻めているのに端以外に手をかけてどうするの? と思われるかもしれませんが、▲2五歩と突く下準備をしようということです。もし、△6四角の反撃がなければ、▲2五歩△2六桂のときに▲1九飛と引いて、これ以上先手の飛車を攻めてくることはできませんよね? そこで、△6四角と出る手を防ぐことを考えていきます。
まずは、逆にこちらから▲4六角と出る手はどうでしょう? 玉の入城への進路をあけつつ、△6四角を防ぐ幸便な手に見えますよね。しかし、△4五歩(第3図)と突かれると、▲6八角と引くのでは結局△6四角と出る手を防いでいませんし、▲3七角では1筋への利きがなくなって、次に▲2五歩と突いても△同銀で端は破れません。
【第3図は△4五歩まで】
よって、▲4六角ではどうもうまくいきません。ほかに、6四へ先手の駒を利かす手はありませんか? ここでは、▲6五歩(第4図)と突く手が正解となります。
【第4図は▲6五歩まで】
通常、矢倉で早々と6筋の歩を6五まで伸ばすのは、例えば桂を7三へ跳ねられたときに当たってきますし、△6四歩と突かれて戦いのきっかけを与える手にもなってよくないことも多いのですが、この場合は狙いがあるので、立派な一手となります。
これで、後手は△6四角と出ることができなくなりました。こうして、次に▲2五歩と突けば、△2六桂に▲1九飛(第5図)と引いて、△6四角と出る手がなく、後手は処置なしとなります。
【第5図は▲1九飛まで】
第5図から、△2五銀は▲1三歩成がありますし、△3八桂成には▲2四歩と銀をありがたくいただいてこれも先手優勢となります。よって、第1図ではあわてて攻めず、一度▲6五歩と伸ばしてから総攻撃に移るのが正解となります。▲6五歩は知らないと指せない手ですので、ぜひ覚えてください。
矢倉の崩し方


監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。