ライター一瀬浩司
急戦矢倉をマスターしよう!角の利きをいかして攻める!
ライター: 一瀬浩司 更新: 2017年09月11日
今回のコラムも、急戦矢倉での攻め方のご紹介をしていきますが、前回までとは少し違った形をご紹介していきます。まずは第1図をご覧ください。
【第1図】
これは、急戦矢倉第2回のコラムでご紹介した形の一つです。振り飛車に対する、急戦のような形ですね。ここから、▲4七銀~▲6六銀と進めれば前回までのコラムと同じ形になります。今回はここからどう進めていくのかを見ていきましょう。
銀が5七なので、前回までのような、▲5五歩△同歩▲4五歩△同歩▲5五銀のような攻め方はできません。銀が出ていないから攻めるのは大変じゃないか、と思われるでしょうが、今回は銀が出ていない代わりに8八の角がずっと敵陣まで利いていますよね。それを生かして進めていきます。まずはもちろん▲4五歩(第2図)と突いていきます。
【第2図は▲4五歩まで】
▲4四歩△同銀▲4五歩△3三銀となれば、4筋に大きな位を取れますので、後手は△4五同歩と取ってきます。以下▲同桂と跳ね出し、△4二銀には▲1一角成、△2二銀には▲4四歩を打てることが、前回までとの大きな違いです。8八の角筋が通っていることが非常に大きいですね。
よって、後手は△4四銀とかわしてきますが、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛(第3図)と2筋の歩も交換しておきます。
【第3図は▲2九飛まで】
あれ? 4五の桂がタダじゃないの?と思われる方は、冷静に盤面を見つめてください。8八の角の利きが1一まで通って▲1一角成とすることができますね。現状では桂に直接ひもは付いていませんが、8八の角の利きで間接的に守っています。後手は先手の角筋をそらすか、もう一つなにかの駒で角筋を二重に止めないと4五の桂を取りきることができません。
では、第3図から、△5五歩と突かれたらどうしますか? ▲同歩は△4五銀と桂を取られてしまいます。今度は5五の歩がジャマをして角筋がそこで止まってしまいます。△4五銀のとき、▲4六歩△3六銀▲3七歩で銀を殺せるからこれでもいいのでは。こう思われた方はなかなか読みが入っていますね。ただ、もう一手読みが足りませんでした。▲3七歩まで進んだときに△4七歩(第4図)と打たれるとどうでしょう?
【第4図は△4七歩まで】
▲4七同銀は△同銀成▲同金に△3八銀と飛車金両取りを掛けられてしまいますし、▲4七同金は△同銀成▲同銀で、取れるはずだった銀と守りの金と交換になったうえに桂損が残ってしまいます。▲5九銀や▲3九銀も、△3七銀成と成り込まれて後手の銀を取ることができません。よって、第3図から△5五歩に▲同歩は、△4五銀と桂を取りきられてしまいます。では第3図からの△5五歩にどうすればいいのかといいますと、▲4六歩(第5図)が冷静な一手になります。
【第5図は▲4六歩まで】
△5六歩には▲同銀とすれば銀を前線に繰り出していくことができます。また、超攻撃的な棋風の方は、第5図の▲4六歩に代えて、▲4六銀も有力です。△5六歩と取り込まれてしまいますが、▲4七銀と上がって5六の歩を取り返しにいきます。こうすれば、二枚の銀を両方とも前線に繰り出して攻めていくことができます。
では、次回は第3図の局面が先手の手番として、そこから先手がどうやって攻めていくのかをご紹介していきます。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。