ライター一瀬浩司

3筋の突き捨てを絡めて破壊力UP?急戦矢倉を覚えよう!
ライター: 一瀬浩司 更新: 2017年08月29日
今回も、急戦矢倉での攻め方を引き続きご紹介していきます。まずは第1図をご覧ください。
【第1図】
あれ? 最初の形に戻ったじゃない?と思われた方もいるでしょう。そうです、最初の形に戻って、前回までよりも、さらに激しく攻める指し方はないか見ていきたいと思います。
まずは、▲5五歩△同歩▲4五歩△同歩▲2四歩△同歩までは、前回同様に進めていきます。そこで、さらに▲3五歩と突き捨ててみましょうか。△同歩と取られて、意味がわかりにくいかもしれませんが、そこで▲5五銀(第2図)と出ます。
【第2図は▲5五銀まで】
やはりここでも、次に▲4五桂と跳ねられると、受けきるのは大変になってきます。一例としては、後手が別の手(例えば△1四歩にしておきましょうか)を指したとします。そして▲4五桂に、突き捨てを逆用しようと△3四銀とまっすぐかわしてきますが、▲4四歩△4二金引に▲5四銀(第3図)と立つ手が非常に味がよいです。
【第3図は▲5四銀まで】
4五の桂にヒモをつけつつ、▲4三歩成△同銀▲同銀成△同金直▲1一角成を狙ったピッタリの一手となります。
また、第3図からは▲2四飛と走る手も厳しく残っております。△2三歩は▲3四飛と銀をタダ取りされてしまいますので、△2三金ですが、▲同飛成△同銀に▲4三歩成として後手陣は崩壊します、飛車を渡すので、△2九飛と打ち込まれるのが怖いですが、▲5九歩と「金底の歩」を打って受けておけば、先手陣はまだびくともしません。
そこで、後手は第2図から前回同様に、△5四歩と追い返しにきます。▲4四歩△5三金▲4五桂△5五歩▲5三桂成△同角▲5四金(第4図)と進めると、3筋の突き捨ての意味が見えてきませんか?
【第4図は▲5四金まで】
前回のコラムでは、3筋の突き捨てが入っていないので、△4四角▲同金△同銀で後続の攻めが難しいと解説いたしました。では、第3図からも同じように△4四角▲同金△同銀だと? もうおわかりですよね。▲2四飛(第5図)と出れば、後手の3筋の歩がひとつ進んでいるので、銀桂両取りの十字飛車が見事に決まります。
【第5図は▲2四飛まで】
このように、3筋の突き捨てを絡めていくと、より破壊力が増していきます。また、3筋を突き捨てておけば、▲4五桂と跳ねた後に▲3三歩が打てるようになるので、桂が活用しやすくなります。
ただし、注意していただきたいのは、3筋を突き捨てた局面は5五から3五まで後手の歩がずらりと並んでおります。ヘタに攻めると逆用されて厚みを築かれてしまいますので、歩を突き捨てる際にはしっかりと読みを入れてから攻めていきましょう。
矢倉の崩し方


監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。