ライター一瀬浩司
飛車と銀で矢倉を攻略!破壊力は十分な棒銀戦法【矢倉の崩し方 vol.2】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2017年06月09日
今回からのコラムでは、矢倉囲いに対して棒銀で攻めていく指し方をご紹介していきます。まずは第1図をご覧ください。
【第1図】
初手から、▲2六歩、▲2五歩、▲3八銀、▲2七銀、▲2六銀、▲3五銀と進めた局面です。銀を棒のように進めていくような形から、このような攻め方は「棒銀」と呼ばれています。
第1図からは、▲2四歩△同歩▲同銀と、攻めていきます。こう攻めることにより、2三の地点には銀だけではなく、2八の飛車も利いていて、2筋を破ることができます。第1図や、▲2四同銀まで進めた局面は、銀という棒を飛車が持って、敵陣に攻めているような局面ですよね。
このように、棒銀は単純な攻め方ですが、飛車と銀が協力して攻めていくので、破壊力は十分にあります。もちろん、相手も破られるのを指をくわえて見ているだけではなく、しっかり受けてきますので、そう単純に突破していくことはできないのですが、矢倉囲いに対しても、うまく使っていけば有力な攻め方にはなります。
それでは、棒銀がどのような戦法か知っていただいたところで、矢倉囲いに対する棒銀での攻め方をご紹介していきましょう。第2図をご覧ください。
【第2図】
第1図のように、▲3五銀と出て攻めていくのは、3四に後手の歩がいて△3五同歩と取られてしまいます。▲3六歩~▲3五歩とあくまでも3筋から銀を繰り出して攻めていく指し方もありますが、本コラムでは、もっとスピーディーな攻め方をご紹介いたします。
そこで、どう攻めていくかといいますと、▲1五銀(第3図)と1筋から、銀を繰り出していきます。
【第3図は▲1五銀まで】
こうすることによって、2四の地点には、第2図では角と歩の二枚の利きだけでしたが、第3図では、飛車、角、銀、歩と駒の利きが四枚に一気に増えました。この部分だけ見ていただいても、棒銀がいかに強力な攻め方かわかっていただけると思います。
第3図からは、もちろん▲2四歩と攻めていきます。△2四同歩▲同銀△同銀▲同角と進みますが、最後の▲同角と角で取ることがポイントです。なぜ、王手になる飛車ではなく、角で取ったのかは後述します。
さて、▲2四同角の局面ですが、もし後手が王手ではないからと、△2三歩などと受けずに、別の手を指してきましたら、一撃必殺の手があります。▲1三角成(第4図)です。
【第4図は▲1三角成まで】
第4図の局面は1三の馬だけでなく、2八の飛車でも王手がかかっており、「両王手」という非常に強力な王手です。例えば、第4図で△2三歩と受けても、▲2二馬で玉を取られてしまうので、1つだけではなく2つの王手を一度に受ける必要がありますので、両王手で逃げ場所がなく詰み、ということも多々あります。
第4図で△3三玉と逃げる手には、▲2四馬△2二玉▲2三銀で寄りですので、△1三同玉と取りますが、▲2一飛成と桂を取りながら飛車を成り込んだ手が、▲2五桂△1四玉▲1五歩までの詰めろと、3二の金取りにもなっていて、これも寄り形となります。
角桂交換の駒損の攻め方ですが、飛車を玉のすぐそばに成り込んで1三の玉の逃げ場所が少ないことと、1一の香や3二の金が取れそうな形ですので、駒損をはるかに超える戦果を得ることができます。
そこで、この攻めを受けるために、▲2四同角のときに△2三歩と受けてきますが、▲5一角成(第5図)と角を成り込むことができました。
【第5図は▲5一角成まで】
もし王手だからと、▲2四同飛と取っていたら△2三歩に▲2八飛と飛車を引くしかなく、第5図とは大違いです。
では、第3図から△1四歩と銀取りに突かれた場合はどう攻めるのか、それを次回のコラムでご紹介していきます。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。