ライター高野秀行六段
まずはじめに覚えておくべき3つのセオリー【はじめての戦法入門-第1回】
ライター: 高野秀行六段 更新: 2016年10月31日
皆さん初めまして。棋士の高野秀行です。今回より「はじめての戦法入門」と題し、初段を目指す初級者の方へ「戦法」を紹介する講座を始めたいと思います。
将棋には「四間飛車」「中飛車」「矢倉」「角換わり腰掛け銀」など多くの「戦法」があります。それぞれに特色や戦い方などがあるのですが、まず初回はそれら「戦法」の多くに共通する、セオリーを覚えていきましょう。
盤を半分に割る!?
「戦法」は大きく分けると、飛車が初形のまま駒組みを進める「居飛車」(第1図)と早い段階で飛車を左方面に動かす「振り飛車」(第2図)があります。
【第1図】
「居飛車」は飛車を動かさずに駒組を進めます。
【第2図】
「振り飛車」は飛車を左辺に動かしてから駒組を進めます。
私が子供の頃は「居飛車」は攻め、「振り飛車」は受け身などと言われましたが、のちにご紹介する「ゴキゲン中飛車」などの登場で、どんどん攻める振り飛車戦法も出現していて、現在では全くといっていいほど受け身などとは聞かれなくなりました。
「居飛車」「振り飛車」ともに序盤の駒組みを進める中で、最も重要となるのが「玉の囲い」です。「囲い」も「美濃囲い」「穴熊」「矢倉」などいろいろありますが、これを作る上で「居飛車」「振り飛車」に共通するセオリーがあります。
まず飛車の位置を決めたら、頭の中で将棋盤を縦に半分に割ってください。そして次に割った将棋盤の中で、飛車がいない方に玉を動かします。第3図を見てください。自陣に「攻めの陣地」と「守りの陣地」を作るのです。
【第3図】
盤を5筋で半分に割ります。右側が「守りの陣地」、左側が「攻めの陣地」と分かれています。
第4図のように飛車と玉を同じ陣地に入れてはいけません。サッカーに例えると飛車はFW(フォワード[攻撃])。攻めの駒と一番大切な「玉」は離すようにしましょう!
【第4図】
飛車と玉を同じ陣地に入れては、役割分担ができなくなってしまいます。
玉の守りは3(スリー)バック!
玉と飛車を離したら、さぁ「囲い」を作りましょう。先ほども書きましたが、「囲い」には「美濃囲い」(第5図)「穴熊」「矢倉」(第6図)などがありますが、全てに共通することがあります。それは3バック!玉の囲いは基本「金2枚と銀1枚」で作ります。端にいる桂、香をまとい完成となります。そうです金、銀がDF(ディフェンス[守備])となり「3バック」で守りを固めるのです。
【第5図】
美濃囲い:玉を桂の上まで進め、銀を立ち、左の金を寄せます。横からの攻めに強い囲いです。
【第6図】
これで守りの陣地が完成となります。攻めの陣地にある、飛、角、銀、桂そして香が攻め駒となり、役割分担ができました。ここまでをまとめると以下の通りです。
- 飛車の場所を決める
- 盤を縦半分に割り、飛車と逆の陣地に玉を動かす(攻めと受けの陣地が決まる)
- 玉の守りは「金2枚+銀1枚」の3バック
「横歩(よこふ)取り」など当てはまらない「戦法」もありますが、この3項目がセオリーと覚えておいてください。では次回は、振り飛車戦法の中でアマチュアにも人気の「四間飛車戦法」より、いろいろな作戦をご紹介していきたいと思います。