「詰将棋パラダイス」VS「ウサギと亀」 ABEMAトーナメント2025~予選Bリーグ1位決定戦振り返り~

「詰将棋パラダイス」VS「ウサギと亀」 ABEMAトーナメント2025~予選Bリーグ1位決定戦振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2025年07月29日

 7月26日(土)に放映された予選Bリーグ1位決定戦、チーム藤井「詰将棋パラダイス」(藤井聡太竜王・名人、斎藤慎太郎八段、古賀悠聖六段)対チーム永瀬「ウサギと亀」(永瀬拓矢九段、佐々木勇気八段、羽生善治九段)戦の模様をお伝えする。前週に本戦入りを決めたAリーグのチーム豊島に続くのはどちらか。
 第1局はチーム永瀬の先手で▲佐々木―△藤井戦となる。昨年の竜王戦七番勝負でぶつかった好カードだ。角換わりから早目に▲4五桂を跳ねて先手が主導権を握る。

【第1局 藤井聡太竜王・名人-佐々木勇気八段】

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【第1図は△4六桂まで】

 第1図はその最終盤。ここで後手玉に即詰みがあるか、なくとも先手玉が詰まないのであれば詰めろをかければ勝ち筋だ。ただ先手は△9五角から6二のと金を抜かれる順も気になる。  佐々木は▲3二飛成と詰ましに出た。以下の進行は△3二同玉▲2四桂△2三玉▲3四角△同玉▲3五銀打△2三玉▲3四金△1三玉、これで後手玉に有効な王手がかからない。▲4六銀と桂を取った手が詰めろ逃れの詰めろだが、△9五角まで藤井竜王・名人の勝ち。投了の局面から▲6八桂は後手玉の詰めろが解除されるので△2九飛▲4九歩△3八角で一手一手となる。さりとて△9五角に▲6九玉も△2九飛に▲5九桂を打たされるので大同小異だ。  戻って、手順中の▲2四桂では▲3三歩△同桂を決めてから▲2四桂ならば、△2三玉に▲3三桂成△同金▲1三金△同玉▲2五桂以下の即詰みがあったが、かなり長い順でかつ難しい詰みである。手堅く指すなら第1図で▲2四桂と詰めろに打つ順は有力だった。△9五角▲8六歩△6二角と、と金を外しても、▲3二桂成△同金▲5二金△同玉▲3二飛成と追っていけば後手玉は詰む。

 続く第2局は▲古賀―△永瀬戦。途中で古賀の見落としもあり、永瀬が優位に進めていたが、最終盤で一瞬のチャンスを逃さなかった古賀が逆転勝ち。第3局の▲羽生―△斎藤戦も羽生がペースをつかんでいたのだが......。

【第3局 羽生善治九段-斎藤慎太郎八段】

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【第2図は▲8八同玉まで】

 第2図。後手玉はまだ詰まないが▲6三歩成が回ると受けがむずかしい。そして先手玉にも詰みはない。ここでは△8七金▲8九玉を決めてから△2四角の攻防手を放つ順も考えられるが、それでは足りないと見たか、斎藤は第2図から△6九角の勝負手を放った。△8七桂成からの詰めろである。
 羽生は▲6九同飛と取り、△同馬に▲5一飛成△同玉▲2四角と詰ましに出たが、△3三金打で届かない。戻って、△6九角には▲9八銀と打てば△8七金▲7九玉△9八金▲6九飛で、以下の進行で後手から先手に有効な攻めが続かないため先手優勢のようだが、この順は本譜の△6九同馬の局面と比較して銀を手放している分、より後手玉に迫る順が難しく見えるため、実戦的には相当に選びにくいだろう。

 チーム藤井はいずれも劣勢の将棋をひっくり返しての3連勝。こうなればもう止まらず、第4局は▲藤井―△永瀬のリーダー対決、第5局は▲古賀―△佐々木戦のいずれも制して、5連勝で一気に本戦進出を決めた。

【第4局 藤井聡太竜王・名人-永瀬拓矢九段】

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【第3図は△3六玉まで】

 第3図はリーダー対決の最終盤。ここでは▲3七金から長手数の即詰みもあったが、藤井の着手は▲6九竜。これを見た解説の井出隼平五段も思わず「辛い!」と絶叫。このと金を外しておけば万が一にも負けはない。△2八銀に▲4五角から今度こそ後手玉を即詰みに打ち取った。
 チーム藤井が圧巻の5連勝で、予選Bリーグの1位通過を決めた。続いて8月2日に放映される予選Aリーグ2位決定戦、チーム稲葉対チーム菅井の対戦もどうぞお楽しみに。

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【総合成績】
第1局 藤井○-●佐々木(第1局はチーム永瀬が先手番。以下は交互)
第2局 古賀○-●永瀬
第3局 斎藤○-●羽生
第4局 藤井○-●永瀬
第5局 古賀○-●佐々木
総合5勝 ― 0勝

【個人成績】
藤井竜王・名人 2-0
斎藤八段 1-0
古賀六段 2-0
永瀬九段 0-2
佐々木八段 0-2
羽生九段 0-1

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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