チーム広瀬VSチーム菅井 ABEMAトーナメント2023~予選Cリーグ第一試合振り返り~

チーム広瀬VSチーム菅井 ABEMAトーナメント2023~予選Cリーグ第一試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2023年06月01日

 5月27日(土)に放映された予選Cリーグ第一試合、チーム広瀬「はやぶさ」(広瀬章人八段、近藤誠也七段、石井健太郎六段)対チーム菅井「関西最強」(菅井竜也八段、西川和宏六段、船江恒平六段)戦の模様をお伝えする。

 振り駒の結果、第1局はチーム菅井の先手番で、対戦カードは石井―船江戦となった。これは相居飛車の力戦を船江が制す。続く第2局は近藤―西川戦で、相穴熊の将棋を近藤が勝った。そして第3局は広瀬―菅井のリーダー対決を菅井が勝利。

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 お互いに一進一退の勝負となったが、なんと第4~6局も1~3局での組み合わせと同一カードが続いた。すなわち第4局は近藤―西川戦、第5局が石井―船江戦、第6局が広瀬―菅井戦。ここまでのチーム成績が3勝3敗と、全く譲らない。

第7局 西川和宏六段─近藤誠也七段

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 全員が残り1局ずつを残して迎えた第7局。なんと3度目の近藤―西川戦に。ここまでは近藤が連勝しているが「同じ相手に3連敗じゃ男じゃない」とリーダーにハッパを掛けられた西川が頑張った。過去2局の穴熊と異なり、先手で三間飛車に振った西川は美濃囲いに組む。対して近藤は3度目の居飛車穴熊に潜った。

【第1図は△5六同馬まで】

 第1図はその終盤。ここで西川は▲3一成桂と寄る。この手を見たチーム菅井の控室からは思わず悲鳴が出た。この瞬間の後手玉が何でもないので、△2九金▲1七玉△1五歩と迫られて、先手玉は相当に危ない。▲3一成桂では▲4九桂と受けるのが無難だった。

 だが西川の闘志が一念を通したか、近藤の着手は△5七金。次に飛車を取れればいいが、ここで先手に好手がある。▲2五桂打が詰めろで、後手は受けにくい。実戦は△同歩▲同桂に△4八金と飛車を取ったが、▲2一成桂△同玉▲3三桂不成以下、西川が後手玉を即詰みに打ち取った。「男を見せたねえ」と控室のチームメイトも称えた。

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第8局 広瀬章人八段─船江恒平六段

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 追い込まれたチーム広瀬は第8局でリーダーが出陣。対してチーム菅井は「最後にリーダーが控えていてくれたら、気楽に指せるので」と船江が登場。広瀬の先手で角換わりの将棋となった。

【第2図は▲3同五歩まで】

 中盤は先手の動きを逆用する形で、船江がリードを奪ったが、負ければ終わりの広瀬は用意に土俵を割らない。第2図は△3八角の両取りに対して構わず3筋の歩を取り込んだ局面である。

 ここで強く△2九角成と飛車を取れば、▲3四歩にも△4二玉(△3四同玉は▲4六桂がうるさい)で、後手玉は5二~6三のルートがあるため捕まらない。対して先手玉は△7七桂打とされると寄り形となる。船江は一度△3五同金と取ったが、これがまずかった。▲3九飛△4七角成に▲3五飛が十字飛車だ。△3四歩に▲8五飛で逆転模様である。急所の桂を外して先手玉はだいぶ安全となった。対して後手玉の上部脱出は困難な形だ。広瀬がリーダーの貫禄を示して最終戦に持ち込んだ。

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第9局 石井健太郎六段─菅井竜也八段

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 最終戦は再度の振り駒の結果、石井の先手番となり、菅井は三間飛車に振った。

【第3図は△4六歩まで】

第3図は中盤、ここで▲4八飛なら長い戦いになりそうだが、石井は▲2四歩△同歩▲3六歩△同銀▲4六歩△同 飛▲2二歩と果敢に動く。だが控室では菅井の兄弟子である船江が「▲2二歩は菅井君が一番嫌がらない手だからなあ」と半ば安堵したかのような表情。実戦は以下△4九飛成▲2一歩成△4六歩▲2六飛△3五歩▲5四歩△7七角成▲同桂△4七歩成と、と金を作った菅井がリードした。対して▲2四飛は△5八と▲7九金△4六角が猛烈に厳しい。手順中の▲2二歩では▲4八歩と受ける順もあったようだが「それなら(第3図で)▲4八飛と受けている」と解説の阿部光瑠七段。

 以降は終盤で石井が猛追を見せるもわずかに及ばず、菅井がチームとしての勝利をもぎ取った。チーム菅井は6月3日(土)に放映される予選Cリーグ第二試合、対チーム佐藤天戦に予選突破を掛けることになる。こちらの対戦もどうぞお楽しみに。

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【総合成績】(第1局はチーム菅井が先手番。以下は第8局まで交互。第9局は再度の振り駒でチーム広瀬の先手)
第1局 船江○-●石井
第2局 西川●-○近藤
第3局 菅井○-●広瀬
第4局 西川●-○近藤
第5局 船江●-○石井
第6局 菅井○-●広瀬
第7局 西川○-●近藤
第8局 船江●-○広瀬
第9局 菅井○-●石井
総合5勝 ― 4勝

【個人成績】
菅井八段 3-0
西川六段 1-2
船江六段 1-2
広瀬八段 1-2
近藤七段 2-1
石井六段 1-2

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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