7月下旬の注目対局を格言で振り返る

7月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年10月08日

豊島将之竜王と藤井聡太王位・棋聖のダブルタイトル戦が続いています。また、王座戦では木村一基九段が挑戦を決め、大舞台へ帰ってきました。

お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第3局

【第1図は△2一飛まで】

第1図はお~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第3局(▲藤井聡太王位△豊島将之竜王)。先手の右辺からの攻めに対し、後手玉は中央に逃げ出して粘りの態勢です。しかし▲8三銀が「玉は包むように寄せよ」の好手でした。▲7四銀成で角を取られるのを防ぐ△6三銀ですが、▲3四成銀△2五飛▲4四歩で厳しい攻めが続きます。以下は寄せ切って藤井王位が2勝1敗とリード。

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写真:日本将棋連盟

第6期叡王戦五番勝負第1局

【第2図は△7一桂まで】

第2図は第6期叡王戦五番勝負第1局(▲藤井聡太王位・棋聖△豊島将之叡王)。王位戦とは防衛、挑戦の立場を入れ替えての対戦です。角換わりから巧みに手を作った先手が優位に立ちました。▲8五金△6四飛▲6五金が「寄せは俗手で」の確実な攻めで、飛車を手にするのが一番速い寄せとなります。実戦は△2三竜▲6四金△4三竜とと金を外して粘りましたが、▲8二飛△5一玉▲6三桂不成から寄せ切りました。

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写真:日本将棋連盟

第69期王座戦挑戦者決定戦

【第3図は▲8六同角まで】

第3図は第69期王座戦挑戦者決定戦(▲佐藤康光九段△木村一基九段)。ベテラン同士の挑戦者決定戦です。後手玉は不安定な格好ですが「中段玉寄せにくし」でもあります。ここから△2六角▲同飛△8六飛▲2五飛△7六飛▲2七飛△2五桂▲2六歩△3七角と強く踏み込んでいきました。大駒を渡す攻めなのでリスクも高いですが、後手玉もすぐに寄るわけではありません。猛攻を実らせた木村九段が押し切り、大舞台へ帰ってきました。

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写真:日本将棋連盟

第34期竜王戦決勝トーナメント

【第4図は△7四歩まで】

第4図は第34期竜王戦決勝トーナメント(▲永瀬拓矢王座△梶浦宏孝七段)。角換わりから激戦の終盤戦ですが、ここは先手が勝ち筋に入っています。▲6四桂△6一玉▲5三桂△同金▲7三銀が厳しい寄せで、後手玉は受けが難しくなりました。「玉は下段に落とせ」「金は斜めに誘え」の格言通りです。梶浦七段は2年連続の快進撃でしたがここでストップ。永瀬王座が挑戦者決定三番勝負へ進出しました。

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写真:日本将棋連盟

第47期棋王戦挑戦者決定トーナメント

【第5図は△3一同銀まで】

第5図は第47期棋王戦挑戦者決定トーナメント(▲谷合廣紀四段△広瀬章人八段)。平凡な攻めでは穴熊に詰めろを続けるのが大変ですが、▲3二金が「終盤は駒の損得より速度」の寄せ。△同銀に▲3一銀と打って深い穴熊に手が届くようになりました。会心の寄せで初参加の谷合四段がベスト8進出です。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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