棋王戦決着やNHK杯決勝など 3月下旬の注目対局を格言で振り返る

棋王戦決着やNHK杯決勝など 3月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年05月21日

棋王戦五番勝負は渡辺明棋王が防衛を果たし9連覇。タイトル獲得通算28期で谷川浩司九段を抜き、歴代単独4位となりました。竜王戦のランキング戦も佳境に入っています。

第46期棋王戦五番勝負第4局

第1図は第46期棋王戦五番勝負第4局(▲糸谷哲郎八段△渡辺明棋王)

【第1図は▲7五玉まで】

堅陣から攻勢をとって後手が優勢に進めてきました。▲7五玉は入玉含みで最後の粘りですが、△8五銀が「玉の腹から銀を打て」の決め手。腹銀の手筋で先手玉は必至です。後手が制勝し、3勝1敗で渡辺棋王の防衛となりました。

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写真:常盤秀樹

第70回NHK杯将棋トーナメント決勝

第2図は第70回NHK杯将棋トーナメント決勝(▲稲葉陽八段△斎藤慎太郎八段)

【第2図は△3五同角まで】

角換わりから激戦の終盤となりました。形勢不明の寄せ合いですが、▲4三金が「要の金を狙え」の食いつき。とにかく相手玉にプレッシャーを掛けておくことが大切です。以下△4二歩に▲4四角△同角▲同金から戦いが続きましたが、最後は一瞬のスキを突いて寄せ切った稲葉八段が初優勝を飾っています。

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写真:渡部壮大

第34期竜王戦ランキング戦2組

第3図は第34期竜王戦ランキング戦2組(▲藤井聡太王位・棋聖△松尾歩八段)

【第3図は△8八角成まで】

▲8四飛と飛車を取る一手で、△7八馬の局面で後手玉を寄せ切れるかの勝負に思えますが、藤井王位・棋聖の発想は違いました。▲4一銀!が絶妙の一着。△同玉は▲3二金なので△同金と取りましたが、それから▲8四飛と取ります。4筋に壁を作った効果で詰めろが掛けやすくなっており、△7八馬に▲7五桂が厳しい寄せ。以下△5一金としましたが、銀を捨てて1手稼げたのがお分かりでしょう。▲4一銀は「終盤は駒の損得より速度」を体現する必殺の一手でした。鮮やかな寄せを見せた藤井王位・棋聖が5期連続の決勝トーナメント進出を決めています。

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写真:文

竜王戦ランキング戦2組

第4図は竜王戦ランキング戦2組(▲八代弥七段△渡辺明名人)

【第4図は△4二玉まで】

矢倉からの寄せ合いですが、先に迫っている先手が一手勝ちコースです。▲6二銀△3一飛▲3四香△同金▲5四角成と「玉は包むように寄せよ」の寄せで受けが難しくなりました。後手は2八の飛車を取る余裕が得られません。以下も確実に寄せ切り、八代七段が難敵を破って決勝トーナメント進出を決めました。

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写真:吟

竜王戦ランキング戦6組

第5図は竜王戦ランキング戦6組(▲小山怜央アマ△西山朋佳女流三冠)

【第5図は▲3八銀まで】

ランキング戦6組準々決勝で女流三冠とアマという珍しいカードが実現しました。お互いに馬を作り合う力戦のスタート。ここから△3二馬▲7八銀△4二銀▲6六馬と進行。「馬は自陣に引け」の通り、互いに馬を引き付けて自陣のスキを消して長期戦の様相です。中盤からねじり合いの続く熱戦となりましたが、最後は先手が抜け出して制勝しています。小山アマは準決勝進出。アマチュア初の快挙はなるでしょうか。

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写真:吟

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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