26歳になって思うこと――石川優太四段

26歳になって思うこと――石川優太四段

ライター: 石川優太  更新: 2020年12月15日

 2020年11月11日。

 この日で26歳になった。やはりこの年齢になるといろいろ思うところはあるが、これまでの人生を少し振り返ってみたい。

僕は小6で奨励会に入った。この年に小学生名人戦で優勝できて1次試験が免除となり、2次試験(現役奨励会員に1勝)の1局目で勝てたので、僕は奨励会試験を1局でクリアした。ささやかな自慢である(笑)
しかし、奨励会入会も束の間、すぐにBがついた。降級こそしなかったが、6級に1年くらいいた。しかし不思議なもので、5級に上がると、そこからは少なくとも半年に1回のペースで昇級を重ね、1級までスムーズに上がれた。この時、中3の上半期くらいだったと思うが、中学卒業までに初段に上がれれば、なんて呑気なことを思っていた。

 しかし、そこから全然上がれない。あと2~3勝というところから崩れてしまう。何がいけないのかよくわからない。結局、初段に昇段したのは高1の終わりの頃だった。

 幸運にも初段から二段へは半年ほどで上がれた。しかし、そこからがまた長かった。1勝1敗ばかりが続き、上がり目すらできない時期もあり、上がり目が出来たと思えば潰れ、Bまで転落したこともあった。しかし、高校卒業が近づい2013年1月から急に星が集まり、卒業式の次の日の3月第1例会で三段に昇段することができた。ちょうど次の期の三段リーグに間に合い、運はいいほうだな、なんて思った。

 三段になるまでを振り返ってみると、6級、1級、二段で一年以上止まった。1級、二段の頃は不安もあったが、そもそも自分のせいだし、今にして思うと、地獄の三段リーグに比べればかわいいものだと思う。

 2013年4月から、三段リーグが始まった。一期目は8勝10敗。トータルで見ればこんなもんだなと思うが、最終日に連敗し、1期抜けさせてしまったのと新人王戦の出場を逃してしまったのは悔やまれる。その後も平凡な成績だったが、6期目にチャンスがやってきた。11勝5敗で迎えた最終日、すでに14勝2敗で1人決まっており、残り1枠を争う状況で、自分より順位上位の11勝5敗が3人いたのだが、1局目でその3人が負け、自分だけが勝ち、突如自力になった。しかし、2局目に負け、昇段できなかった。普通に指したつもりだったのだが、やはり心のどこかに「勝てば四段昇段」が棲みついていたのかもしれない。

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 次の7期目以降は、昇段どころか指し分けの成績すら取れず、年齢だけ増えて行った。そして11期目で最低成績(6勝12敗)を取り、自分が棋士になることはないな、と思った。この時23歳、残り5期。どうせ上がれないなら、残りの寿命は好きなようにやろうと思った。

 12期目、対居飛車には全局、ノーマル三間飛車を採用した。今までは、同じ戦法をやると警戒されるとかなんとか気にしていたが、先述の通り、棋士になれないなら残りの寿命は好きにやろうと思っているので、警戒がどうこうなど全くどうでもよかった。このスタンスが良かったとは思えないが、なぜか星が集まり最終日を前に13勝3敗の2番手になった。正直、最終日に連敗はしないだろうと思っていた。慢心でしかない。連敗を喫し、これまでの人生で1番きつかった。いろいろ思ったり考えたりしたが、「どう考えても死は怖い」ということが良くわかったので、とりあえずは生存を選択した。

 とはいえ、将棋に触れる量は、半年前より明らかに減った。0ではない、というだけといってもいい。そんな状態で星が集まり、昇段できたのかは自分でもわからない。ただ、12勝4敗で迎えた最終日、今度は大丈夫だろうと思って1局目に負けたときは、またダメなのか、が頭を支配した。2局目は対局中(さすがに序盤だけだが)ですら、いろいろなことを考えた。なぜ奨励会を受けようとしたのか、なぜ棋士を目指そうとしたのか、など。そこで出た答えは、「強い相手と指したいから」。そう思うと、昇段だの、競争相手だの、悪夢の再来だの、そんなもんどうでもいいと思えた。この時思ったこと、考えたことを極力忘れないようにしたい。

 ここまで振り返ると、自分は盤外のあれこれを考えすぎてると思う。明らかに、盤外を考えてないときのほうが力は出ている。名誉だの勲章だの、あまり気にせずに生きていけるようになりたいものだ。

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石川優太

ライター石川優太

1994年11月11日生まれ。三重県三重郡出身。森信雄七段門下。2019年10月四段。

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