ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年02月10日
インタビューの後編では予選からの振り返りと、最近の生活など様々な話を聞かせてもらった。
──今期の棋王戦を予選から振り返って下さい。最初に表を見た時の印象は。
「同じブロックに永瀬さんがいたので、当たるまでは頑張りたいなと思っていました。実際に永瀬さんと当たりましたが、それまでのVSの戦績は8連敗でして。対局の翌日もVSでしたが2連敗で、そこだけ勝っちゃっていいのかな...と。VSはほとんど相居飛車で歯が立たないのに、対局では飛車を振られたのが意外に感じました」
──決勝トーナメントの表を見た時の印象はいかがだったでしょうか。
「いきなりB1との対戦で大変だなと。と言ってもシード選手は大抵B1以上ですし、どこを見ても厳しいので仕方ないですね。とりあえず1局は勝ちたいと思っていました」
──その後は快進撃で勝ち上がっていきます。具体的に挑戦を意識したのはどのあたりでしょうか。
「勝者組決勝で広瀬さんに勝った時ですね。これでようやく可能性があるなと。敗者組に回ってしまうと挑戦者決定戦で2連勝が必要なので、まず無理だと思っていましたから」
──挑戦者決定戦の相手は佐々木大地五段でした。普段の交流などはあるのでしょうか。
「昔はよく指しましたが、最近はたまに研究会で顔を合わせる程度です。決勝でやるとは思っていませんでしたが、あちらもこの相手なら十分連勝のチャンスがあると思っていたでしょうね(笑)。1局目は完敗でしたが、むしろ気持ちは切り替えやすい内容でした。私は圧勝するか完敗するかのタイプなので。佐々木さんとは竜王戦6組、王位リーグでも対戦が決まっていて今年度はずいぶん当たっています」
佐々木五段との挑戦者決定二番勝負 棋王戦中継ブログより
──勝ち上がっている時に師匠(宮田利男八段)からは何か言われましたか。
「特に何も言われせんでしたが、挑戦を決めたら激励会をやりたいと思っていたようです。昨年12月28日が一門の忘年会だったのですが、16日の挑戦者決定戦第1局で決まっていたらどこかを貸し切って盛大にやるつもりだったそうで。ですが第1局を負けてしまい、第2局は前日の27日。もし私が負けた時にそんな豪勢な会にしても仕方ないので、師匠の道場(三軒茶屋将棋倶楽部)での忘年会に落ち着きました(笑)」
──ご家族からは何か言われましたか。
「両親はルールは分かる観る将なので喜んでいるのは伝わってきました。第1局も現地に来たがっていたそうですが、師匠が『家族は前夜祭などには行かない方が』と止めたそうです。もしかしたら解説会に来ていたかもしれませんが。でも、今はアベマなどで中継が入るので見てもらいやすいですね」
──持ち時間4時間で結果が付いてきていますが、やはりそういった意識はありますか。
「結果を見るとはっきり合っているんでしょう。でも4時間だと少し余ることもあるので、3時間が一番合っている気がします。秒読みが苦手なので早指しは得意でなく、逆に5時間を超えると持て余してしまうので、もうちょっと慣れていきたいところです」
──タイトル戦登場により、若手棋戦(新人王戦、加古川青流戦、YAMADAチャレンジ杯)はあっという間に卒業になってしまいました。
「激痛ですね(笑)。このままだと夏に出られる棋戦がなくなってしまいそうで。最後になる新人王戦は得意な持ち時間なので頑張りたいです」
──新四段インタビューでは同門の斎藤明日斗四段に追い抜かれたことを意識されていました。
「今思うと何をあんなに意識していたんだろうという感じですね(笑)。挑戦を決めて五段になって、久しぶりに王将を持つことができるようになったのは良かったです」
──注目の一局としては折田翔吾アマの編入試験も控えています。折田さんは勝てば合格で、タイトル戦並の注目度が予想されます。
「あちらは人生が掛かっているので、こちらも相応の気持ちを持って対局に臨みたいです。折田さんとは三段リーグでは1勝1敗でした。折田さんの編入試験は、勝った2局は良くなってからの安定感が抜群だったので、先にリードされないようにしないといけません」
棋王戦中継ブログより
──挑戦が決まってからの生活は変わりましたか。
「取材が数件あったのと、呉服屋に行ったくらいで特に変わりはありません。普段通りVSや研究会が中心の生活が続いています。明日から第2局の移動日まで対局を含め、ほぼ毎日将棋を指す予定です」
──VSや研究会などはどれくらい行っているのでしょう。
「月に15回くらいやっているので、棋士の中でもかなり多い方だと思います。一番多いのは永瀬さんとのVSで、月に4回ペースで指しています。最初はほとんど勝てませんでしたが、最近はようやく勝負になるようになってきました」
──この1年の点数を100点満点で採点すると。
「うーん、95点くらいでしょうか。今年度は40局くらい指せればいいと思っていましたが、55局くらい指せそうで、自分の理想は超えています。本戦入りを目標の一つとしていたので挑戦権を獲得できたことについては100点以上ですが、順位戦が今ひとつだったのでそこは来期の課題です」
取材時の様子
(2月3日・新宿にて取材)
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