ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年02月09日
史上初の参加1期目で挑戦権を獲得した本田奎五段。今回は2回にわたって挑戦者のインタビューを掲載する。取材は都合により第1局の後になったため、開幕局の感想を聞くことができた。
──第1局はお疲れ様でした(第1局移動日翌日の取材)。まずは初タイトル戦の感想などお聞かせ下さい。前日の移動などはいかがでしたか。
「和服は事前に送ってあったので、特にどうということもなく普段通りでした。北陸新幹線に乗ったのは初めてです」
──タイトル戦の記録係もしたことがないそうで、検分も初めてだったのでは。
「A級最終局の記録を務めたくらいで、環境としてはそれが一番近かったでしょうか。今年も順番的に可能性はあったのですが、山本さんがやってくれることになりました。検分は駒をどれにするかくらいで、特に問題もなく終わりました。対局室が広くて、金屏風があったのには『おおっ』となりましたね」
──前夜祭では挑戦者としての挨拶がありました。
「正直、対局よりも緊張しました(笑)。こういった挨拶は経験がなかったので、事前に何を話すかはしっかり考えておきました。でも1回やったので、次からはそんなに緊張することもないかと思います」
前夜祭の様子 棋王戦中継ブログより
──前日の夜は眠れたのでしょうか。
「なかなか寝付けず、何時くらいなんだろうと時間を見たら4時だったので、あまり寝られませんでしたね。少し経って明け方に少し寝ることができました。でも、対局が始まってみると寝不足でも影響がないと分かりました」
──当日の朝や対局中の食事は喉を通りましたか。
「朝はヨーグルトを少し食べたくらいです。普段の対局も起きた時間によって朝は食べたり食べなかったりなので、あまり変わらないかなと。あと、おやつにケーキとフルーツ盛り合わせを頼んだことになっていますが、何も頼まなくてもフルーツが出てくるのを知らなくて驚いてしまいました(笑)。私が説明があったのを聞いていなかっただけかもしれませんが、渡辺棋王はそれを知っていたから飲み物しか頼まなかったんでしょう」
──振り駒は残念ながら後手となりました。
「ちょっと悲しかったですけど(笑)、仕方ないですね。先後両方の準備はしていましたが、振り駒なのでもちろん精度は落ちます。後手の方が力を入れて準備はしてありましたが、途中で想定にない展開に進んでしまいました」
──和服を着ての対局はいかがだったでしょうか。
「スーツと比べて楽でしたね。正座もしやすいですし、姿勢を保ちやすい作りになっているので。自分で着付けられるとなおいいのでしょうが、今回は白瀧さんに手伝っていただきました」
棋王戦中継ブログより
──和服はどちらで準備されたのでしょうか。
「1着は買ったのですが、残りの2着は師匠の和服です。師匠(宮田利男八段)から『自宅にしまったままだったのを思い出したからあげるよ』と連絡が来まして。和服は横のサイズは調整がしやすいようで、縦のサイズだけ仕立て直して着られるようになりました。3着全部買うとかなり高かったと思うので助かりました(笑)。第2局は師匠からいただいた和服で対局する予定です」
──今回は金沢、宇都宮(第2局)、新潟(第3局)と地方で対局を行います。
「記憶にある限りどこにも行ったことがありません。ただ、気持ち的に将棋以外のことを楽しむ余裕がないのが正直なところです。金沢はご飯がおいしかったので、別の機会に観光で行ってみたいですね」
──渡辺明棋王の印象はいかがでしょうか。
「強かったですね。第1局は勝負どころもなく、苦しくなってからは引っ繰り返せる感じがありませんでした。その前が勝負どころと思って次に臨みたいです」
──第2局以降の抱負をお願いします。
「1局目を負けてしまい、2局目の先手番も負けてしまうと早くも追い詰められてしまいます。ここで取らないといけないつもりで準備していきたいです」
取材時の様子
(2月3日・新宿にて取材)
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