ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年01月21日
史上初となる、参加1期目でタイトル挑戦を決めた本田奎五段。今回は本田五段の第45期棋王戦挑戦までの道のりを予選から振り返っていこう。
本田の棋王戦初戦は勝又清和六段戦。竜王戦でデビュー後、プロ2戦目だ。相掛かりから空中戦の展開となった。
【第1図は△9八歩まで】
図で▲9八同香は△8六飛▲同歩△9八角成の狙いがある。実戦は▲7四歩△同飛の交換を入れて▲9八香と手を戻した。以下△7八飛成▲同玉△7六金▲7四歩と激しい攻め合いになったが、本田が抜け出して制勝。棋王戦初勝利をあげた。
続く2回戦は中村修九段と対戦。中村の三間飛車に急戦を仕掛ける。
【第2図は△4五同飛まで】
美濃囲いが完成する前に戦いに持ち込んで先手ペースだ。ここから▲5六銀が駒得を生かす手厚い銀打ち。以下△8八角成▲同銀に△4二飛に悠々▲2四歩を間に合わせた。以下は差が広がり本田の快勝。
3回戦は阿部光瑠六段と対戦。阿部のゴキゲン中飛車に乱戦模様の戦いとなった。
【第3図は△7三同桂まで】
図で▲7四桂は△9三玉で詰まないが、逆モーションの▲9三銀が詰将棋のような妙手。△9三同玉は▲8五桂△同桂▲9四銀△9二玉▲8三銀成△同玉▲7四竜からの即詰み。実戦は△7一玉に▲8二金まで後手の投了となった。
予選準決勝は永瀬拓矢七段(当時)と対戦。永瀬は当時叡王を取る直前で、ここまで15連勝中と絶好調だった。序盤の駆け引きの末に永瀬の三間飛車に本田の棒銀に。早い段階で戦いが始まったが、双方土俵を割らずに大熱戦となった。
【第4図は△4三歩まで】
駒が入り組んで激戦の跡がうかがえる局面。▲5三香成△同馬▲7四香と詰めろを掛けて後手玉は寄り筋に入った。以下△7二香に▲5四桂△6三玉▲4一竜△7四玉▲6一竜で先手玉が詰まず勝ちが決まった。永瀬の連勝を止める殊勲の星で予選決勝に進出。
予選決勝は増田康宏六段と対戦。ここまでの4局はすべて本田が先手だったが、本局は後手に。増田の相掛かりから大駒の飛び交う乱戦となった。
【第5図は▲8六角まで】
図は飛車を取り合って一気に終盤戦となった局面。ここで△5五飛が好手となった。5三で清算しても後手陣は連結が良く飛車の打ち込む場所がないため▲7七角と引いたが、△4五飛▲1一角成△2六桂が厳しく後手に分のある攻め合いとなった。以下は短手数で本田の快勝。
本田は若手強豪との連戦をくぐり抜けて予選通過を決めた。なお、後に挑戦者決定戦で戦うことになる佐々木大地五段も予選からの勝ち上がり組だ。
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