5筋の歩を突かずに組むところが大きな特徴だが...。「神吉流居飛車穴熊」の注意点と発展形をご紹介

5筋の歩を突かずに組むところが大きな特徴だが...。「神吉流居飛車穴熊」の注意点と発展形をご紹介

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年12月28日

前回のコラムでは、「神吉流居飛車穴熊」の組み方を見ていきました。今回は、神吉流居飛車穴熊に組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。

それでは、まずは囲いの組むまでの手順の復習です。初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲2五歩、▲7七角、▲8八玉、▲7八銀、▲5九銀、▲6八銀、▲7九銀、▲9八香、▲9九玉、▲8八銀(第1図)。

囲いの特徴:第1図をご覧ください。

【第1図は▲8八銀まで】

それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。

組む際の注意点:前回も少し書きましたが、5筋の歩を突かずに組むところが大きな特徴でした。第2図をご覧ください。

【第2図は△5四銀まで】

先手が5筋を突いてある形から、▲5九銀と神吉流居飛車穴熊を目指しましたが、そこですかさず後手に△5四銀と繰り出されたところです。5筋を突いていなければ、▲6八銀として△6五銀に▲2六飛で大丈夫でしたが、この形では△6五銀が7六と5六にある歩の両取りになってしまいます。

第2図で▲6六歩は角筋が止まるので、△4五歩と突かれてしまいます。以下、▲6八角は△6六角ですし、▲5七金は形が悪いです。▲2六飛と浮くのは、△4四角▲2八飛△3三角と千日手狙いの順もあり、早くも後手に一本取られた感じですね。角筋が通っていれば、△4五歩に▲3三角成△同桂▲2四歩から2筋を突破できるので、後手の4筋を伸ばす手をけん制できています。続いて第3図です。

【第3図は▲9八香まで】

藤井システムに対し、神吉流居飛車穴熊を目指したところですが、ここから△7五歩▲同歩△8五桂とさっそく攻撃開始をされると困ります。▲6六角は△6五歩で角が死ぬので▲8六角ですが、△4五歩と伸ばされると7九や7八の銀が逃げ道をふさぐ駒となっていますね。▲7七桂に△4六歩▲同歩△同飛(第4図)とされると、次の△7六歩が強烈であっという間に先手敗勢となってしまいます。

【第4図は△4六同飛まで】

神吉流は角筋を通したまま組めるところが魅力ですが、逆をいえば振り飛車側も相手玉を角の射程に入れやすいとも言えますので、こういった急戦策には注意が必要です。それでは、次に囲いの発展形を見ていきましょう。

囲いの発展形:第1図から、▲6八金寄、▲7九金としても強度は増しますが、そこからさらに▲8六歩、▲8七銀右、▲7八金寄、▲9六歩(第5図)まで進められれば、端も上部も強化され、隙のない堅陣となります。

【第5図は▲9六歩まで】

対振り飛車に5筋を突かない指し方はあまりありませんが、初めて対峙する相手でしたら間違いなく戸惑ううえ、こちらは堅陣に囲えるので、非常に有力な戦法です。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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